悔しい退場劇から再起 緊急出場で活躍 J1神戸の飯野七聖「試合でのミスは試合でしか取り返せない」
サッカー・J1のヴィッセル神戸は、17日のJ1第27節で、ガンバ大阪との上位対決に2-2と引き分け。同日に勝利した首位・FC町田ゼルビア(勝点53)との勝点差は7に広がり、順位も5位に転落。悔しい勝点1になり、J1連覇を狙ううえで厳しい状況となってしまいました。それでも、この一戦では、これまで出番に恵まれなかった選手や、負傷離脱を経て復帰した選手の活躍が、希望の光にもなりました。その1人が、前半途中からピッチに立ち、好クロスで先制点を演出したMF飯野七聖選手です。 【写真】2022シーズン、ACLラウンド16でゴールを決めたときの飯野七聖選手 ヴィッセル3シーズン目、ガンバ戦前まではJ1リーグ戦10試合の出場にとどまっていた背番号2。今季2度目の先発となった第25節川崎フロンターレ戦では、1試合で2枚の警告を受けて、前半終了間際に無念の退場処分に。不遇のときが続いていましたが、ベンチ入りした今節、その悔しさを晴らす場面は、突然訪れました。 主軸のFW武藤嘉紀選手が、前半早々に接触プレーで負傷。交代を余儀なくされ、前半18分という早い段階で、飯野選手に出番がまわってきました。右サイドの攻撃的なポジションに入ると、同サイドの広瀬陸斗選手と連携をとりつつ、盛んに上下動を繰り返し、チームに活力をもたらします。 すると、前半の45+3分、飯野選手のプレーが均衡を破るきっかけに。自陣から飛び出し、右サイド敵陣でボールを受けると、マークに来た相手の一瞬の隙をついて好クロスを供給。これが、最後はエースFW大迫勇也選手のゴールにつながりました。 タフな戦いを強いられるなかでも、右サイドで奮闘を続けた飯野選手。チームが土壇場に同点弾を献上し、結果は悔しい引き分けに終わりましたが、今季もがき苦しんでいた右サイドのスペシャリストにとっては、今後への活路を見い出せるような試合になったと言えるでしょう。 試合後、報道陣の取材に応じた飯野選手は、この試合に至るまでの思いや、ガンバ戦の感想などを語りました。 「前々節はああいった形で退場してしまい、結果的にチームにすごく迷惑をかけてしまった。また、個人的にもやっとここで(出れると)いうなかで、ああいう形で終わってしまって、すごくふがいなさがあったというか、イライラもあったし、いろんな気持ちがあった」と、川崎F戦での退場からの日々を振り返った飯野選手。 それでも、「終わったことは終わったこと。次が大事だと思って、きょうの試合に出た」「プレーヤーは、試合でのミスは試合でしか取り返せない。毎試合、どの試合も、自分にムチを入れてやっている」というハードワーカーは、急きょやってきた出番にも即座に対応。 先制点の起点となった右クロスでは、ゴール前に入っていく味方の人数をしっかり把握。「大迫選手が後ろから走り込んでくるのが見えたので、彼が中に入ってきたほうがより怖さが出るなと思って、ひとつためて(からクロスをあげた)という感じ。1コ前にクロスをあげたとき、サコくん(大迫)に『俺を見ろ』と言われていたので、彼にあげれば一番得点の確率が高いし、あのシーンもサコくんが見えていたので、サコくんに(クロスを)あげた」と明かします。 今回の引き分けについては、「正直、いますぐ切り替えろというのは厳しいところもある。優勝争いをするなか、リードして、あの状況でラスト1分で決められるのは、絶対あってはならないこと。チームで要求し合わなきゃいけないことはあったと思う。次に、というよりは、しっかり反省するのが最初かなと思う」と本音も吐露。 ただ、復調の兆しを見せた飯野選手の存在は、チームにとっては大変心強いものであるのも確かなことです。 「最近やっと自分の形というか、特長をいかせる場所で、よりサイドでもらえるシーンが時々は出せるようになってきた。中断期間のトッテナム(ホットスパー)戦とスタッド・ランス戦で、自分のなかでいいイメージをつかめてはいたので、きょうもそういったイメージで試合に入ることができた」 「クロスの感触はいつもいいし、あれが僕の形」と、右からの高精度クロスに絶対的な自信を持つ、飯野選手。「いかに多く(右クロスのシーンを)作り出せるかが、チームの勝敗にもかかわってくること。それを考えながらいつもやっている」というように、ガンバ戦のような右クロスを供給し続けることが、彼にとっては、試合に出続けるための生命線となるでしょう。 8月21日には天皇杯ラウンド16の柏レイソルとのアウェイ戦も控えるヴィッセル。J1を含めて国内2冠の可能性をまだ残すなか、9月からはアジアの戦い「AFCチャンピオンズリーグエリート2024-25」も開幕。ここからは総力戦となり、必然的に各選手の出番も増えてくることが予想されます。 飯野選手は「すごく過密日程のなか、僕にとってもそれは久々になるが、まずはコンディションを維持するため、毎日しっかりトレーニングして、休んで、というのを続けないといけない。いろんな組み合わせで試合をやることが増えていくと思うので、より選手間でコミュニケーションをとって、やりたいことを要求し合うのが大事になると思う」と、抱負を語っていました。 前回のACLでもラウンド16の大事な一戦でゴールを決めて勝利に貢献した実績を持つ飯野選手。Jで、アジアで、右の翼がさらに羽ばたく姿を、これからも期待せずにはいられません。(ラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』)
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