「電車に乗るのは非常識」 ベビーカーは車内で折りたたむべき? 遠慮不足が招く批判の声、専用マークの認知度「わずか52%」という現実
公共交通の配慮促進、広がる理解
ここで、ベビーカーマークの誕生と現在の取り組みを振り返ってみよう。 2013(平成25)年6月、国土交通省はベビーカーの利用環境を整えるため「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」を設置した。この協議会には、国土交通省をはじめ、学識経験者や子育て関連団体、交通事業者団体、行政機関などが参加している。協議会では 「電車やバスなどの車内やエレベーターでは、原則としてベビーカーを折りたたまずに使用できること」 を原則とし、2014年3月にはベビーカーの安全な利用場所を示すベビーカーマークを策定。また、利用者と周囲の人々が理解し合うためのガイドラインとして「ベビーカー利用にあたってのお願い」も作成された。 その後、ベビーカー利用時のルール整備も進み、エスカレーターなどベビーカーの使用が禁止されている場所には「ベビーカー禁止マーク」が設置されるようになった。 協議会は現在、「子育てにやさしい移動に関する協議会」へと発展し、ベビーカーマークの普及と環境整備の取り組みがさらに推進されている。
思いやりが鍵となる公共交通の共存
混雑した電車やバスでの移動では、 「ベビーカーをたたんで子どもを抱っこする」 という選択肢もある。しかし、立ったまま抱っこしていると急ブレーキ時に転倒し、子どもが危険にさらされる可能性がある。また、満員の車内では、子どもが圧迫されないか不安になることも多い。このような状況から、混雑時でもベビーカーを利用したいと思う場面は少なくない。 とはいえ、周囲に迷惑をかけないか過度に気にするあまり、ベビーカーを使うのを躊躇してしまうこともある。こうした事態を改善するために、ベビーカーの使用が多い場所には積極的にベビーカーマークを設置し、その意味を周囲の人々に理解してもらう必要がある。 一方で、ベビーカーを使用する人々にも配慮が求められる。「ベビーカーマークがあるから迷惑をかけても問題ない」という態度では、当然批判やマーク撤廃を求める声も上がるだろう。 ベビーカーマークの認知度が高まるとともに、全ての利用者が思いやりを持つことが、よりよい共存に不可欠である。
小島聖夏(フリーライター)