女性は「地方にいろ」と言うのか…「消滅可能性都市」増田レポート最新版が押し付ける「少子化の責任」
2014年に発表された、いわゆる「増田レポート」は日本の地方都市の存続危険性を浮き彫りにするものとして、メディアでさかんに取り上げられた。だが、その指摘は受け入れがたい部分も多く、批判が多かったのも事実だ。その点は前編記事「「消滅可能性都市」10年後の増田レポートへの「強烈な違和感」…拭えない「上から目線」の感覚」において指摘している通りとして、10年後の改訂版が出た今も、人口戦略会議の論理には問題があるのではないかと、筆者は指摘する。 【写真】20年後も一流であり続ける「日本唯一の巨大企業」の名前
過疎自治体リストとの違い
ところで、こうしたリストに近いものに、例えば、国が作る過疎自治体のリストがある。 過疎自治体は、人口減少率、高齢者または若年者比率、そして財政力指数をもって指定される(これらを「過疎地域の要件」という)。いま全国で885、全自治体の51パーセントが過疎だ。 この要件のうち、若年者比率は若い女性の数と相関するので、消滅可能性自治体と重なる過疎自治体は多い。だがこの二つのリスト、一見似たものに思えるかもしれないが、その性質は丸っきり違うものである。過疎自治体のリストの目的はこうだ。 全国のうちには狭い土地に密度高く住む大都市があれば、広い面積で可住地の少ない人口過疎の条件不利地域もある。他方で人口過疎といっても、多様なこの国土の中で、例えば水源林や農地の保全において、国民全体にとって大事な役割を果たす地域がほとんどである。 国はその条件不利を支援し、是正して、都市と農山村が互いに支え合う関係を導かねばならない。過疎自治体にはこの目的のため、それなりの予算が講じられる。 そしてこれを受け、現場では、予算を元に様々な事業が長年にわたって試みられてきた。ただしそれは、ただ弱者を支えるだけのものではないということに注意しなくてはならない。 例えば、今回の地方創生の目玉となった「地方移住」や「関係人口」などは、過疎対策を軸にした過疎自治体と国・県の長い間の取り組みが元になって結実し、地方創生で全国に波及したものである。 過疎対策から出発した新たな政策が、非過疎自治体にも広げられている。これこそが今の私たちに必要な政策形成プロセスである。