FRBのパウエル議長の記者会見-Recalibration
はじめに
FRBは今回(9月)のFOMCで50bpの利下げを決めた。パウエル議長は、米国経済が底堅く推移している点を確認しつつ、インフレが目標に向けて収斂する一方で、利下げによって景気動向に即した労働市場の強さを維持しうるとの自信を示した。
経済情勢の評価
パウエル議長は、足元で消費が堅調に推移しているほか、設備投資も回復しており、当面は現状程度のペースでの成長が見込まれると説明した。 実際、今回改訂されたSEPでも、2024~26年の実質GDP成長率見通しは全期間にわたって2.0%とされ、前回(6月)からは2024年のみが0.1pp下方修正された。因みに、「長期」成長率は1.8%に据え置かれたので、米国経済は潜在成長率をやや上回って推移するとみていることになる。 一方で、労働市場は軟化を続けていると評価し、雇用の増加ペースの減速、失業率の小幅上昇、賃金上昇率の軟化等に言及しつつ、労働需給は2019年時点より緩いと評価した。 実際、今回改訂されたSEPでは、2024~26年の失業率見通しが4.4%→4.4%→4.3%とされ、前回(6月)からは各々0.4pp、0.2pp、 0.2pp上方修正されている。これらは、「長期」失業率である4.2%を若干上回っている。 質疑応答では、複数の記者が労働市場の見通しが楽観的すぎるとの批判を示した。パウエル議長は、上記のような指標には軟化の兆しがあるが、現時点では新規失業保険申請などには増加もみられないとして、解雇圧力が高まっている訳ではないとの認識を示した。 また、パウエル議長は、労働需給のバランスが改善した点を歓迎しつつも、移民の影響については、短期的には失業率を押し上げる可能性も含めて慎重に見るべきとの考えを示した。さらに、この間の構造変化を踏まえると、長期的に見たUV曲線への回帰にはなお時間を要するとの見方も示唆した。
物価情勢の評価
パウエル議長は、インフレ率が着実に軟化しているものの、依然として目標を上回っている事実を確認しつつ、総合インフレ率とコアインフレ率の乖離にも言及した。その上で、家計や企業、金融市場のインフレ期待は安定しており、インフレ目標の達成に向けた持続的な動きに対するより強い自信を得たと説明した。 今回改訂されたSEPでは、2024~26年のPCEインフレ率見通しは2.3%→2.1%→2.0%とされ、前回(6月)からは2024~25年が各々0.3pp、0.2pp下方修正された。一方、コアPCEインフレ率の見通しは2.6%→2.2%→2.0%とされ、前回(6月)からは同様に2024~25年が各々0.2pp、0.1pp下方修正された。 質疑応答では、複数の記者が住宅価格の高止まりに懸念を示した。パウエル議長は、住宅価格は軟化しているがペースが遅く、さらに家賃へ波及するには時間的なラグがあるとの見方を示した。もっとも、住宅価格のこうした先行きを考慮しても、インフレ目標の達成は可能との考えを強調した。 一方、利下げが住宅価格を再び押し上げるとの懸念に関しては、政策金利が中立水準に戻るまでには一定の時間を要することや、政策金利とモーゲージ金利との相関には不透明性が残ることなどを指摘して、影響に関する明言を避けた。