「勝つべくして勝つために、データを活用する」:バスケットボール女子日本代表ヘッドコーチ 恩塚亨 氏のデータ哲学
デジタルマーケティングの世界において、データの利活用は切っても切り離せない存在だ。より深く理解しようとするほどデータとは単なる数字や情報ではなくなり、その捉え方がマーケティングを成功に導く鍵にもなる。 「データとは行動につなげるツールであり、結局は具体的な行動にどう移していくかが大きな鍵」だと語ったのは、バスケットボール女子日本代表チームを率いる恩塚亨ヘッドコーチだ。DIGIDAYが主催したDIGIDAY BRAND LEADERS 2023(以下、DBL)にて登壇した恩塚氏は、「どのようにデータを駆使して論理的な革新に導いていくか。私の場合、ひとつひとつの効果的な打ち手が連続的かつチームプレーになるよう、導くようにしている」とデータ哲学を語った。 今回のDBLのテーマは「DATA PHILOSOPHY~データを哲学し、理解する~」。データの捉え方、解釈、実践的な取り扱い方に至るまで、プロフェッショナルたちの知見に触れた。本記事では、徹底したデータ分析を武器に、女子日本代表のヘッドコーチとして現在はパリ2024オリンピックにて金メダルの獲得を目指す恩塚氏のDBLセッションを紹介する。
データ=確実に勝つ論理的確信
まず、セッションで恩塚氏は「勝つべくして勝つために、データは行動に『活かす』ためのツールだ」と、自身のデータ哲学を語った。スポーツの勝敗は個人の資質やその場の成り行きも大きく影響されるが、恩塚氏は「そういったギャンブル的な戦い方ではなく、知性に基づいた連動を積み重ね、確実に勝つ論理的確信を持ってコーチングすることを目指している」と話す。 確実に勝つ論理的確信とは、「データ」のことである。では、バスケットボールにおいて重視するデータとは何なのか。「勝つことが命題であり、勝つ可能性を高めるデータに注目する」と恩塚氏は言い、バスケットボールの競技的特性から見た勝利に大きく及ぼすデータと、自分たちの強みを最大化して相手の弱みにぶつける戦略に基づくデータ、この2つに着目し、データの応用を行っているという。 バスケットボールは相手より多く得点することが勝利条件であるが、その得点とは、攻撃1回の得点率と攻撃回数の掛け合わせだ。つまり、攻撃の質と量の掛け合わせとも言える。さらに言い換えると、得点効率の高いシュートを数多く打ったほうが勝つ確立が高いということになる。恩塚氏は「こうした発想をちゃんと持って、バスケットをする」と語る。 また、「効果的なシュートを打てているか」「フリースローシュートを打てているか」「シュートを打てずにオフェンスが終わる割合」「リバウンドの獲得率」の4つの項目をバスケットボールのKPIにしているといい、「ここを基準とし、この基準値のズレを見ながら、自分たちの課題はどこにあるのかということを見ている」と述べる。