凱旋帰国の井上尚弥が語った英国衝撃TKO劇の真実と今後
英国グラスゴーでのWBSS(ワールドボクシングスーパーシリーズ)準決勝で衝撃の2回TKO勝利を果たしたWBA、IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(26、大橋)が21日、ロンドン発のJAL機で帰国、凱旋会見を行った。明らかになったのが、あのIBF世界同級王者、エマヌエル・ロドリゲス(26、プエルトリコ)を倒した衝撃の試合の真実だった。5階級制覇の“レジェンド”ノニト・ドネア(36、フィリピン)との決勝戦は、日本開催を希望している。 機中で一睡もできなかったというチャンピオンを出迎えたのは愛する家族だった。息子の明波ちゃんを抱きあげると「来てくれると思っていなかったのでもうデレデレ」と最高の笑顔。ロンドンでは、2時間の買い物くらいしかできず、「肉体の疲労はないが、気持ちが疲れた」と言うが、空港には数十人の報道陣が殺到。 「この歓迎ぶりに疲れも吹っ飛びました」と爽やかに言う。 綺麗な顔。わずかに右の上腕部分に筋肉痛があったが、それも消えたという。 今だからこそ語れる真実があった。 「ロドリゲス陣営への怒り? 無茶苦茶ありました。グラスゴーでは一言も口に出さなかったけれど、腹立たしい。絶対にぶっ倒してやろうと。(最初に)ダウンを奪ったとき、相手のセコンドに向けて、ちょっとアピールしてやろうとも思ったけれど、そこはボクシングはスポーツなので止めた。でも、それくらいの気持ちだった」 試合の4日前に現地で行われたロドリゲスの公開練習を視察した父で専属トレーナーである真吾氏がロドリゲスの新任トレーナーのウィリアム・クルスに小突かれるという事件があった。公開練習だからスマホでシャドーボクシングを撮影していた真吾トレーナーに何やら文句を言い詰め寄ってきた。通訳に聞くと「撮影するな」というクレームだったが、「公開練習なのになんでダメなのか」と無視していると、ついに真吾トレーナーを突き飛ばし、その後もずっと睨みつけてきたという。 「ずっと睨んでいるので、次、なんかやってきたら、やってやろうと、眼鏡を拓真に渡したんです」。公開練習に同行していた井上尚弥の実弟でWBC世界バンタム級暫定王者の拓真に外したメガネを渡して臨戦態勢に入っていたというのだ。 あわやの緊迫感。だが、父は感情を抑えて我慢した。 「もしやっていたら相手と一緒になっちゃう。やらなくてよかった。ナオは、その場にいなかったし、その話は一切しなかった。僕がカリカリした姿を見せると影響が出る。冷静に戦ってほしかったからね。ナオが怒っていたなんて今知った」 その父の我慢が結果的にプラス効果につながっていく。 「入場で相手にブーイング。会場が味方にもなってくれた。相手の作戦ミスです」 入場の際に、ロドリゲスにブーイングが浴びせられ、井上が「ホーム感があった」というほど、満員のファンは日本人王者の応援についた。一連のロドリゲス陣営の不作法は現地でも批判的に報道されており、そのアンフェアな態度に紳士の国の人たちは、不快感を覚えていたのである。だが、ゴング直前まで相手のトレーナーは睨みつけてきたという。