<咲き誇れ!センバツ広陵>チーム一丸、確実に成長 2回戦惜敗/夏へ再出発 /広島
健大高崎の初優勝で幕を閉じた第96回選抜高校野球大会に出場した広陵は、2回戦で青森山田に5―6で敗れた。投打ともにもう一踏ん張りができずにタイブレークの末、サヨナラ負けした。目標の日本一には届かなかったが、一冬を越え確実に成長した姿は見せられた。【武市智菜実】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 21日の1回戦は、二枚看板の継投策を取る高知との対戦。終盤に追加点を奪い接戦を制した鍵は「チームバッティング」にあった。 選手たちは、昨冬からバントや盗塁などの小技を生かして得点することを目指していた。この試合では、一回に田村夏芽選手(3年)の送りバントが失策を誘い、先制した。終盤には交代選手が活躍した。九回に代打の枡岡憲志選手(3年)が初球を左前に運び、代走の空輝星選手(2年)も盗塁に成功。白髪零士選手(2年)がダメ押しの適時打を放った。多くの選手が「小さなプレーを積み重ね、自分たちの良い攻め方ができた」と練習の成果に手応えを感じ、中井哲之監督も「それぞれが自分の役割をよく理解している」と感心していた。 投手では、2年春から3季連続の甲子園出場となった高尾響投手(3年)が2試合とも完投した。年明けまでは野球人生で一番というほど迷いがあったが、投球フォームの改造に黙々と励んだ。その結果、「脱力しながら左足をゆっくり上げる」という答えにたどり着いた。新しいフォームで臨んだセンバツの2回戦は12奪三振と甲子園での自己最多をマーク。「直球が走っていたし、変化球もキレが出ていた」と手応え十分。バッテリーを組む只石貫太捕手(3年)も「コントロールが良くなった」と称賛した。 昨秋の大会で、一回に四球などで走者を出した反省も生かし、「初回から良い流れを作る」という目標は達成できた。2回戦は七回まで無安打の好投を見せたが、終盤、踏ん張りきれなかった。「連打を食らって力んだ。四球が増えて失点する悪いところが出た」と振り返り、「最後まで淡々と投げて、勝てる投手にならないといけない」と夏を見据えた。 優勝はできなかったが、一体感がチームの良さだった。3月上旬、大会前にあった練習試合後、打撃が不調だった酒井綾希人選手(3年)がコーチにアドバイスを受けているのを見た土居湊大選手(3年)や吉村舜捕手(2年)、2年生の控え選手らが自然と集まり、紅白戦が始まったことがあった。堀田昂佑投手(2年)や相原知希投手(2年)は、内野や外野など普段とは違うポジションでプレーし、不調選手の実戦練習に協力した。 グラウンド整備など練習環境を整えてくれる控え選手への感謝の気持ちも忘れない。世古口啓志選手(2年)や草島絃太選手(2年)は「メンバーに入れなかった先輩の分まで、責任あるプレーをしたい」と常に口にしていた。 選手だけで行う自主練習でも学年に関係なく、互いにアドバイスしあった。2回戦の青森山田戦の前日も、土居選手が世古口選手に手本を示すなどして打撃のタイミングの取り方について教える姿が見られた。翌日、世古口選手は「もらったアドバイスを意識したらうまくいった」と、2点適時打を放つなど活躍した。 チームは、2回戦で敗れた翌日から学校のグラウンドで練習を再開。「夏に甲子園に戻って、この負けがあったからこそ成長できた姿を見せたい」と意気込む。グラウンドのスコアボードには「5040」(甲子園)▽「721」(夏日本一)という決意の数字。広陵の「日本一」への道は続く。