野球しようぜ!母国にバットやボール寄贈15年…スリランカ出身の審判「大事に使いレベルアップを」
スリランカ出身で、日本の社会人野球や高校野球の審判として活躍する大分県別府市の会社員、スジーワ・ウィジャヤナーヤカさん(41)が、日本国内で使われなくなった野球道具を集め、母国の子どもたちに贈る取り組みを続けて今年で15年を迎えた。「自分と日本をつないでくれた野球に恩返ししたい」との思いから、寄贈を通じて野球の楽しさやフェアプレーの意味を伝えている。(佐々木浩人) 【写真】スリランカに寄贈された野球道具=スジーワさん提供
スリランカの中心都市コロンボ。8月9日、母校のアーナンダ高校で野球道具の贈呈式が開かれ、同国の野球連盟に登録する95チームと、これから野球を始める女子学生5チームの関係者が集まった。日本の高校野球で低反発の金属バットが本格導入されたことで使われなくなり、スジーワさんが所属する福岡県高校野球連盟を通じて集められたバット241本と、全日本軟式野球連盟から提供されたボール2400個が贈られた。
式に出席したスジーワさんは、在スリランカ日本大使館の水越英明大使(当時)から、野球を通じて両国の相互理解と友好親善に寄与したとして表彰された。あいさつに立ち、「日本のおかげで海を渡ってきた道具を大事に使いながら、野球のレベルアップを図ってほしい」と呼びかけた。
スジーワさんは母国で高校生の時に野球を始め、国の代表選手にも選ばれた。2006年に別府市の立命館アジア太平洋大に留学し、野球部に入部。知人の勧めで審判の講習会に参加し、試合をコントロールする重要さに気づいた。
本格的に審判を始めた09年、タイ・バンコクで開かれた国際大会に合わせ、別府市で集めた野球道具をスリランカチームに寄贈したのが取り組みの始まりだった。
野球用品取り扱う店少なく、道具不足
終戦直後まで英国の植民地だったスリランカでは、英国発祥のクリケットが盛んだ。スジーワさんによると、野球は1980年代に伝わり、徐々に普及しているものの、野球用品を取り扱う店舗が少ないことから道具不足が続いている。
スジーワさんはこれまで、日本国内で審判として携わった大会の参加者らに、不用になった野球用品を持参するよう協力を依頼。バットやボールのほか、ユニホーム、スパイクシューズなど様々な道具を譲り受け、帰国時に重量制限いっぱいまで飛行機に載せたり、大会で来日した母国のチームに持って帰ってもらったりしてきた。