税理士に聞く“夜職”の怖い税務トラブル 元キャバ嬢インフルエンサー25億円相当の“貢ぎ物”無申告のウワサが本当ならどうなる…?
整形費用も経費になる? “夜の業界”で認められる経費とグレーゾーン
冒頭でも触れた通り、今回の騒動では、元キャバ嬢がAさんからもらった領収書を“自分の経費”として申告していた疑いも浮上している。 他人の領収書を利用して経費を水増しする行為は「仮装隠蔽」に該当し、「重加算税」という厳しいペナルティが課されるという。その税率は、申告後の税務調査で重加算税が適用された場合は35%、無申告で適用された場合は40%に上る。 ここで気になるのは、「キャバ嬢やホストは何をどこまで『事業所得の経費』にできるのか」という点だ。松本氏の見解はどうだろうか。 「基本的に、売上に直結するものが経費になります。ただしキャバ嬢やホストの場合、どこまでを経費とできるか判断が難しい部分があります。 支出には、事業所得の必要経費以外に、家事関連費・家事費があります。 家事関連費は、スマホ利用料など仕事の部分とプライベートの部分が混在するもの。家事費は完全にプライベートの出費です。キャバ嬢やホストの場合、特に問題になるのが前者で、仕事用とプライベート用を明確に分けにくい。特に化粧品代は、指摘されやすい項目ですね」 ヘアカラー&カット代(※ヘアメイク代は必要経費として認められる)やエステ代も、経費として認められるかどうかは「微妙」だといい、整形費用についても、交渉はできても税務署からは経費と見なされにくい実態があるそうだ。
過少申告&SNS投稿が招く“税務調査リスク”
その他、夜の業界で働く人々が注意すべき税務トラブルについて、松本氏は次のような事例を挙げる。 「よくあるのが、所得を過少申告している場合に、毎月のクレジットカード利用額から税務調査が入るケースです。たとえば、1か月の売上を20万円で申告しているのに、クレジットカードの引き落としが毎月30万円以上ある場合、税務署から売上の不自然さを指摘されるか、他に収入源があるのではと疑われやすくなります」 さらに、近年ではSNSがきっかけで申告漏れが発覚するケースも多いという。 「ここ10年ほどで、国税局もキャバ嬢やホストのSNSをチェックする機会が増えているそうです。しっかり申告していれば問題ありませんが、無申告だとSNSの投稿をきっかけに調査が入ることもあります。 レンタルしたものを『買った』『もらった』とSNSに投稿し、それが調査の発端になったケースや、ホストが『俺は〇千万円プレーヤーだ!』と現金を積み上げた写真を載せたところ、税務調査が入ったケースもあります」 見栄のためにSNSで金品を披露するのも考えものというわけだ。事業所得や贈与はあくまで自己申告制。真面目に申告するかは良心にゆだねられているが、「これくらいなら大丈夫」と思っていると、痛い目に遭うかもしれない……。 取材協力:税理士法人松本 ■倉本菜生 1991年福岡生まれ、京都在住。龍谷大学大学院にて修士号(文学)を取得。専門は日本法制史。 フリーライターとして社会問題を追いながら、近代日本の精神医学や監獄に関する法制度について研究を続ける。 主な執筆媒体は『日刊SPA!』『現代ビジネス』など。精神疾患や虐待、不登校、孤独死などの問題に関心が高い。 X:@0ElectricSheep0/Instagram:@0electricsheep0
倉本菜生