2軍調整中の阪神・藤浪をフロントと現場が異例の合体復活計画
「先発だとストライクが入らなくなり四球を連発しても責任があるので投げ続けなければならない。精神的負担は大きくなる。短いイニングなら、そのプレッシャーはないので、再スタートとしては、最適な選択かもしれない。だが、いずれ長いイニングを投げなければならないし、彼が持っている右打者への“ぶつけたらどうしよう”という深層の怖さを払拭しなければ、根本的な解決にはならないだろう。 試合や打者によってガラっと内容が変わるのは、投球フォームだけの問題でなく、たぶんに心理的影響が大きいと思う。日々、勝負のかかっている1軍のスタッフに、藤浪の苦しんでいる本音を理解することが難しいのであれば、2軍のスタッフが、彼の声を聞いてあげることが大切。掛布2軍監督が、積極的にコミュニケーションを取っているという話も聞くが、復活のヒントはそこにあると思う。フロントと現場が一緒になって再生に乗り出すことも大事だと思うが、そもそもこの5年間、藤浪をどう管理してきたのか、なぜこういう事態を招いたのかの原因を探る必要があるだろう」 藤浪がコントロールを乱す特徴は、右打者のインサイドに抜けるスライダーと、右打者のアウトコースに引っ掛けるストレートだ。4月4日のヤクルト戦で5回9四死球と大荒れしたあげく畠山への死球を巡って乱闘劇に発展した。このゲームがトラウマになったのか、「無意識のうちに右打者のインサイドを狙おうとすると、体が三塁側に流れ、腕が体から離れ変化球が打者に向かって抜けるフォームになる」(池田氏)という。 その一方で打者が微動だできないような素晴らしいボールがコーナーに決まるケースも少なくない。元々、その球威に関しては球界屈指である。藤浪自身、納得のいくフォームを固めることに試行錯誤してきたが、昨年オフから肉体も大きくなり、意識とメカニックに微妙な“ズレ”が生じて、その摺り合わせも難しくなっている。つまるところリンクしているメンタルとメカニックが合致しなければ復活とは言えないのである。 藤浪不在の1軍ローテでは、秋山が1本立ちしたが、岩貞が不安定で、ドラ2の小野もツキにも見放されて今なお未勝利。能見も長いイニングを任せることができないという不安がある。メッセンジャーと秋山の2枚だけでは、広島の追撃は難しい。藤浪の一日でも早い一軍復帰が、阪神が再び首位争いに参戦するためのキーワードであることは疑いようがない。フロント、現場が一体となっての藤浪復活プランは、果たして実を結ぶのだろうか。