ドロドロ系ドラマなぜ大流行? 托卵、復讐、女性風俗…背景に多様化する電子コミックの影響
■なぜこんなに多い? TVerやVOD、電子コミックの豊富なドロドロ作品群も影響
「昨今のドロドロ劇の再燃は様々なネットツールの隆盛が背景にある」と語るのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。 「まずドロドロ系はSNSでネタにされやすく、情報が出た当初こそ批判コメントが大量投稿されてXトレンドに入ったりしますが、そうした内容が話題になることで興味を持ってしまうのが人情(笑)。逆に宣伝になり、オンエアのみならずTVerの再生回数にも直結する。再生数がテレビ視聴率とは別の指標として確立されたことも大きいと思いますね」(衣輪氏) たしかに、最近では「TVer総再生数〇万回突破!」というニュースをよく目にする。「SNSを通じて批判的に感じていたが、結局TVerで観てハマってしまう」というのは、ありがちな流れだろう。人は結局、なんだかんだドロドロや人間の深淵を深くえぐるような作品に惹かれてしまう。自分では踏み込まなくても、ドラマで疑似体験できるのというのが、ドロドロ系作品が好まれる理由の一つだと語る。 「コンプラが厳しい昨今ですが、ドラマは“フィクション”であるだけにまだ余白がある。そこへ、NetflixなどVOD制作ドラマや韓国ドラマの大ヒットで、こうしたドロドロ・過激な作品の需要が可視化された。もはや当たり障りない内容やテーマでは物足りなくなったのでしょう。制作もビジネスですから、数字を求めてそういったものを作るようになります。 そして、今それらの題材を多く輩出しているのが、電子コミックです。マンガ原作ドラマはこれまでも数多く制作されていますが、とくに昨今はドロドロ系をマンガから取り入れている感が強い。前述した最近のドラマでも、『3年C組は不倫してます。』『わたしの宝物』以外はマンガ原作です」(衣輪氏) ■「復讐」や「サレ妻」コミックは10年で売上155倍に、スキマ読みやWEB広告 マンガ界のドロドロ系といえば、かつて一部で熱狂的な人気を博したレディコミが挙げられる。ただ、現在は大規模なヒットやブームとは言えないはず。それなのになぜ今、マンガ界をドロドロ系が席巻しているのだろうか。『買われた男~女性限定快感セラピスト~』『満タサレズ、止メラレズ』など、ドラマ化した話題作をオリジナルコミックとして抱えるコミックシーモアでも、やはり「ここ5~10年くらいでより増加している感触がある」とのこと。実際、コミックシーモアにおいて「復讐」や「サレ妻」などの名称がついている作品数は、過去10年間で7倍に伸び、売上は155倍に 。その背景には、いくつかの理由が考えられるそうだ。 「ひとつは、やはり電子コミックの普及。通勤通学などのスキマ時間にスマホでマンガを読むユーザーが増えたことで、よりわかりやすくストレートな展開の作風が読まれやすくなった印象があります。また、マンガ読者世代がオトナになった、というのも要因の一つかと。『週刊少年ジャンプ』がギネス記録となる最高発行部数653万部を記録した1995年付近には業界が非常に盛り上がり、またコロナ禍で電子コミックを読む人が拡大しました。そういった環境の中で、電子コミックをよく読む世代が、実際に結婚して家族を持つ年齢に。ドロドロ系で描かれるような離婚や不倫といったトラブルも対岸の火事ではなくなったことで、こうしたジャンルの作品をより手に取りやすくなったとも考えています」(コミックシーモア担当者) 一方で、これも現在ならではかもしれないが、「WEB上でのマンガ広告の活発化」も起因しているとみられる。「感情・欲望を揺さぶる作品はWEB広告と非常に親和性が高く、そのため出版社様や作家様の創作意欲が高まり作品量も増えたのでは」と推測している。