<万里一空・彦根総合23センバツ>/4 土壇場で粘り発揮 近畿大会8強、強豪相手にも意地 /滋賀
昨秋の県大会準々決勝の彦根東戦は、勝利目前の九回2死三塁で勝田新一朗投手(2年)が適時打を浴び、試合は振りだしに戻った。上田大地主将(同)は「最後まで諦めずに頑張ろう、ここから取り戻すぞ」と声を張り上げる。気持ちは負けていなかった。 試合は延長十三回からタイブレークに突入し、十三回に4点、十四回に1点を失うものの、その都度追い付く。十五回にも2点を奪われたが、その裏2死満塁から「とにかく出塁しよう」と秋山昌広選手(1年)が四球を選び1点を返す。次の田代奏仁選手(2年)は「相手投手も疲れている。ここで決める」と打席に。狙い通り甘く入った初球をたたくと打球は左翼手の頭を越えた。サヨナラで約4時間の激闘を制した。2死から点を取るという「執念」を我が物にした瞬間だった。 宮崎裕也監督(61)は「選手たちの執念が見えた。辛抱強く試合ができるチームに変貌した一戦だった」と話し、選手たちも口々に「我慢して土壇場で取り返した。自分たちが最も成長できた試合だった」と振り返る。 試合後、ベンチで泣く勝田投手に宮崎監督は「悔しさを次に生かせ」と声を掛けた。勝田投手は期待に応え、準決勝の近江兄弟社戦で七回無失点の好投。チームは決勝でも瀬田工に快勝し、県大会初優勝を果たした。 だが優勝の瞬間、選手たちは喜びつつもマウンド上に集まらなかった。宮崎監督から「目標は日本一。優勝は単なる通過点」と言われていたからだ。センバツに向けた本当の勝負は近畿大会だ。 「近畿大会はレベルが上がる。一つのエラーが命取りになる」と宮崎監督は選手にげきを飛ばし、チームは守備の強化に取り組んだ。初戦は持ち前の粘りで近大新宮(和歌山)に競り勝ち8強へ。勝てばセンバツ出場が大きく近付く準々決勝の相手は、この年のセンバツ優勝校の大阪桐蔭(大阪)。簡単な相手ではない。 「失うものはない。挑戦者として楽しもう」と臨んだ選手たちだが、初回から強豪の実力を見せつけられる。一死で相手打者に中前打を放たれると、中堅手の送球が一瞬、もたついた。打者走者はその隙(すき)を突いて一気に二塁へ。そこを起点に2点を先制された。森田櫂選手(2年)は「相手には次の塁を積極的に狙う執念がある」と感じた。 彦根総合も負けない。その裏に追い付き、2死満塁で森田選手が四球を選んで勝ち越し。三回にも1点を追加してリードを広げた。 それでも相手は好機を逃さない。四回に安打や四死球に失策も絡み一挙5点を奪われ逆転される。どんな球にも対応する相手の打撃に野下陽祐投手(同)は「直球でも変化球でも三振が取れない。投げるところがない」と圧倒された。攻撃も相手の堅守の前に四回以降は得点できず、4―9で敗れた。 悔しい結果に終わったが、宮崎監督は「ビッグイニングを作らせなければ勝てるかもしれないと思った。球に食らい付いていくプレーが見られた」。上田主将も「中盤にヒットがもう一本出ていれば流れは変わった」と強豪との差を感じつつも手応えを感じた一戦だった。【飯塚りりん】=つづく(題字は彦根総合書道部)