2軍落ちの京大君の消えていないチャンス
桜は咲かなかった。 初の京大卒のプロ野球選手として話題を集めていた千葉ロッテのドラフト2位、田中英祐投手(22)は18日、ヤフオクドームで行われたソフトバンク戦に初先発。これがオープン戦3度目の登板となったが、4回を投げ、4安打3失点(自責2)の結果で、試合後、伊東監督は「まだ勉強する部分があるね。残念ながら、しばらく下(2軍)で勉強してもらう」と2軍落ちを決定した。 それでも随所にプロで通用する側面も垣間見せた。開幕1軍は逃したが、今後、2軍でのレベルアップがうまく運べば、4月28日からの9連戦に先発ピッチャーが足りなくなるため、そこで1軍復帰チャンスを与える可能性もある。京大卒の第1号投手がプロ初勝利を記録する日は、そう遠い日ではなさそうだ。
パ・リーグ最強と言ってもいいソフトバンク打線相手に、その立ち上がりにポンポンと2つアウトをとった。だが、柳田をフルカウントにしたところからおかしくなった。「甘く入った」(田中)というスライダーをレフト前に返され、それが不運にもイレギュラーして角中が後逸。得点圏に走者を背負い、工藤監督から新4番に指名されている業師・内川に対しては、緩急の揺さぶりでツーナッシングとしたが、そこからウイニングショットを制球ミス。カウントが整ってから勝負のストレートを足元に打ち返された。 続くはイ・デホ。ストレートを3球続け、この日最速の147キロのストレートを見せた後にフォークを落とそうとしたが、これが落ちなかった。ストライクゾーンに甘く抜けた変化球を韓国の至宝が見逃すはずがない。レフトへ特大の2ラン。「飛びましたね。プロは失投は見逃してくれません」。それでも、続く松田には、同じくそのフォークを今度はしっかりと落としてスイングアウトを取った。田中のメンタルを示す場面だ。 3回には、ふた周り目のクリーンナップと再び対戦したが、今度は、すべてストレートで、柳田を二ゴロ、内川を右飛、イデホを三ゴロと三者凡退。ソフトバンクの強打者が「いける」と踏んだストレートが、少し手元で走っていたのだ。まだクイックの技術も身についていないため、吉村に簡単に盗塁を決められるなど、プロとしての不足部分を多く露呈したが、その一方でプロとして通用する部分も十分に示した。球種で言えば、指にかかった時の140キロ後半のストレートと、スライダー。プロの資格で言えば、逃げずにインサイドを積極的に攻める気持ちの部分と、冷静な自己分析能力である。 伊東監督の言う「伸びシロがある」とは、この点だろう。 投手陣が、まだ整備されていないというチーム事情がなければ、田中が、この時期まで1軍でテストを受けていることはなかっただろうが、首脳陣は、田中の潜在能力を認め、そのモチベーションを維持させる意味でも、3度もプロの1軍マウンドを経験させたのだ。