能見篤史氏 球児監督の野球勘はブルペンで培われた
【球児にYELL 能見篤史氏(上)】阪神・藤川新監督とゆかりのある人物が思い出を語るとともに、激励のメッセージを送る「球児にYELL」。今回は、現役時代にともに主力投手としてプレーし、身近で接した能見篤史氏(45=本紙評論家)。ブルペンで培われた野球勘、試合を読む眼力の鋭さに指揮官としての適性を見いだすなど、上下2回にわたって、その人柄を語った。 ブルペンは狭い、独特の空間だ。グラウンドレベルにある神宮のような例もあるが、阪神のホームグラウンド甲子園のブルペンは一塁アルプス下の閉鎖された空間にある。藤川監督は現役時代、そのほとんどをブルペンで過ごしていた。 グラウンドの熱気とも、スタンドの歓声とも別の空間で、リリーフ投手は出番を待つ。そして、いきなりマウンドに引っ張り出されると、切羽詰まった場面が待ち受けている。1死満塁、2死一、三塁…。それを抑えるのがリリーフの仕事。並大抵の神経では務まらない。 藤川監督の野球勘、試合を読む眼力は、このブルペンで鍛えられた。モニター画面で試合の動きをじっと観察し、グラウンドの状況、相手打者の調子、そして出番がいつ来るのかを考える。自分の出番だけに集中するタイプもいるが、藤川監督は常に試合のポイント、流れに考えを巡らせていた。 一緒にブルペンで出番を待っていた時代、その「読み」にはしばしば驚かされた。「そろそろ試合が動くかも」という言葉がその通りになったり、巨人戦で「きょうは2点差で坂本からの打順かな」という9回の登板シチュエーション予想が的中したりする。監督としても、この試合を読む能力は大きな武器になると思っている。 就任会見でも守りの重要性を強調しており、ブルペンが藤川監督にとっても大きなウエートを占めるのは間違いない。新たな1、2軍スタッフで注目したのが監督の現役時代からブルペン捕手だった片山大樹さんが、ブルペンコーチ兼ブルペン捕手として首脳陣に加わったことだ。藤川監督らしい目のつけどころだと感じた。 01年からブルペン捕手を務めた片山さんは長年、阪神の投手陣を支え、藤川監督も私もお世話になった。意見も的確だし、状態を見抜く目を持っている。藤川監督がいないブルペンを、片山さんのミットが守る。お互いの性格も分かった上で、任せるつもりなのだろう。裏方さんも大事な戦力という藤川監督の信念がうかがわれる。 (本紙評論家=<下>に続く)