東京にEVセカンドインパクトが発生中!? アウディは3つの隠し味でさりげなく浸透する
近所のお宅がアウディのSUV型EVである「Q4 e-tron(イートロン)」に買い替えた。いつ換えたのかわからないぐらいさりげなく(笑)。場所は都内の戸建て住宅地で、駐車スペースには給電機付き。たぶんこの一帯は風鈴の音色が響き合うように、EV所有の一軒家が増えていく予感がする。 【写真】アウディ「SQ8 スポーツバック e-tron」の全体像 言うなれば、これは東京における“EVセカンドインパクト”ですよ(笑)。もちろん予兆のような第一波はすでに来ていてテスラのオーナーをよく見かけていたものの、単発で点在していてフォロワーが増えることはなかった。「たしかあのお宅は前もアウディだったはず?」と思いつつ、ブランドのSUV型EVの頂点にある「SQ8 スポーツバック e-tron」に乗ってみることにした。 この「SQ8 スポーツバック e-tron」は、率直にいって恰好良い(笑)。SUVにしてロー&ワイドなフォルムにクーペスタイルのリアルーフがあいまって、ハードコアな競技用オフロードカー(トロフィートラック)を彷彿させる。乗る気をそそるし、車台を共有しているエンジンモデルとの違いも感じてみたかった。 乗った結論からいうと、奇をてらったところのない、とても手なじみのよい大型EVだった。V8エンジン搭載モデルのような、アウディらしさを印象づける軽快さこそないものの、乗れば乗るほど魅了されていく。 その理由は、まずモーター特性がトルクコンバーター式オートマチックのようにスムーズでなめらかな加速に仕上げられていること。左側のパドルシフトを引くと回生ブレーキによるワンペダルドライブが可能なものの、基本はアクセルとブレーキによる2ペダル仕様。でもアクセルを抜くとエンジンブレーキのようにかすかな制動力が働いて、しっかり電気を回収しているのがわかる。 今回、軽井沢への足に使ってみたんだけど、軽井沢から関東平野まで降りる高低差で航続距離を80kmほど伸ばし、バッテリーに回生電力をチャージできていた。この数字は、よくある高速道路のサービスエリアにある40kwの急速充電機30分ぶんの充電とほぼ一緒だったね。 出力特性も伸びはV8エンジンっぽいけど、スーパーチャージャーがついてるようにトルクフル。トルクは1,000Nm近くあって、これがまず第一の隠し味。だから車重2.72トンの重量級ボディを感じさせない走りぶりなわけ。強力なトルクは見せつけるのではなく、走りの冗長性として小出しに使う。まぁ、マッチョな重量挙げ選手が片手間の薪割りをしてるような感じですよ(笑)。 そのパワーは3つのモーターによって制御され、リアアクスルに取り付けられた2つのモーターが4輪のトルクベクタリングも制御。これが第二の隠し味でアウディは“電動トルクベクタリング”と呼んでるんだけど、さすが「クアトロ」のアウディよね。四輪それぞれのトルクマネージメントで正確なハンドリングをサポートする。ワインディングでもしっかりフラットをキープ。繰り返すけど2.72トンあるにも関わらず、その車重を感じさせないんだな。 3つめの隠し味は、足まわりに他ならない。通常の「Q8 e-tron」が柔軟な路面入力で乗り心地重視の5リンク式なのに対して、このクルマはコーナリングの安定制御に有利なダブルウィッシュボーン式ですよ。どちらもエアサスなんだけど、「SQ8」の場合、サスペンション剛性の高さがはっきり感じられる。この剛性が上屋と足回りをつなぐ関節の強度として効いている。 結局のところ、「EVの快適性とは何か?」という話なんだ。EVはいかに上屋の重さを感じさせずに重量を受け流せるかにかかっている、といって過言じゃない。エンジンモデルからEVモデルに乗り換えたとして、一番のネックは車体が重いこと。それにともなって、足まわりの減衰力を高くして不自然に硬いという点に集約されるんだ。アウディのe-tronシリーズは、そんなEV化にともなう重量のハンデをいかに自然に感じさせるかに命をかけてるんだな(笑)。 それと“EVセカンドインパクト”の点からいうと、従来のアウディファンはEVでもこのブランドを選んで後悔はないはず(笑)。アウディは、派手なスポーツ性能はポルシェに任せて、再編いちじるしいEV界では保守の立場を表明している。先鋭的なBMWとは対照的だし、ドイツ御三家でいえばメルセデス・ベンツも同じ方向性かな。目指すところは、昔から変わらない理想のクルマ像の追求。いまのところ、なのかも知れないけれどね。
アウディ SQ8 スポーツバック e-tron
全長×全幅×全高:4,915×1,975×1,615㎜ モーター:交流非同期式 最高出力:403hp 最大トルク:973Nm 駆動方式:クアトロ(四輪駆動) 最大航続可能距離:482㎞(WLTCモード) 車両価格:¥14,920,000 問い合わせ先/Audi コミュニケーションセンター TEL:0120-598-106 www.audi.co.jp
写真 & 文:青木雄介