『マウンテンドクター』とその他の医療ドラマの違いは? 杉野遥亮が体現する“希望”
『マウンテンドクター』(カンテレ・フジテレビ系)第9話が9月2日に放送された。 歩(杉野遥亮)の兄・翔(時任勇気)の友人である聡一(森準人)が宮本家を訪れる。聡一は翔の遺影に手を合わせ、久々に山に登ると話した。入院中の鮎川(石丸謙二郎)に代わって鮎川山荘の仕事を手伝っていた歩は、聡一から道に迷ったと連絡を受ける。当直の江森(大森南朋)の制止を振りきって、歩は単身救助に向かう。しかし、その行動がMMTを窮地に陥れることになった。 【写真】向き合う歩(杉野遥亮)と江森(大森南朋) 山岳医の二次遭難。あってはならないことが起きてしまった。歩が聡一を発見した時点で時刻は日没間際。聡一の身体は冷えきって低体温症と高山病の危険があった。標高の低い場所への移動は患者の容態を考えれば必ずしも不合理ではない。また、携帯電話の圏外で救助を呼ぶことができなかった。けれども、それは後から振り返ると判断ミスだった。場所を移動したことで救助隊は二人を発見することができず、また歩は足をくじいて移動が困難となる。やむなくビバーク(山中での野営)をした二人は、翌日、航空隊のヘリに発見され収容された。 無事に救助されてひと安心と思われたが、同時間帯に別の山で救助要請があり、ヘリが向かえなかったことで遭難者が重体になってしまった。後日、聡一のSNS投稿から遭難時の状況が発覚し、別の現場で遭難者が出たことと合わせてMMTに非難の矛先が向けられる。折悪く、聞きつけた聖子(池津祥子)のリークにより、歩の不祥事は週刊誌に書き立てられた。うなだれる歩に江森は「お前の独りよがりな行動で全ての連携が崩れて、あと1秒早ければ救えたかもしれない命を脅かした」と猛省を促した。 「この県に山がいくつあると思ってる? お前一人の力でどうにかなるもんじゃない」 誰しも遭難のリスクはある。小さな判断の誤りが大きな事故につながることはこれまでも描かれてきたが、第9話で分岐点になったのは個人的な感情だった。何が正解かは状況に応じて変わるため一概には言えない。地域の医療資源、救助に充てることのできる人員・設備、山岳医の技量によって変わる可能性がある。山荘を飛び出す歩に江森が発した「一刻を争うような容態ではない」は、もし命にかかわる状態であれば、自ら向かう判断になったかもしれない。複合的な要因が絡むが、医療と救助の役割分担に加えて、結果論で語られる厳しさが山岳遭難の本質にあると考える。