<センバツ21世紀枠>候補校紹介/6 東播磨(近畿・兵庫) オンライン指導で成果
一つのベースに両方向から選手が勢いよく交互に突っ込み、左方向へ直角に急転換する。武器として磨き上げてきた走塁技術の一つで、できるだけスピードを落とさずにベースを回る練習だ。 地域住民の願いを受け、全国的に珍しい2市3町組合立として1974年に誕生した東播磨は、3年後に県立に移管した。稲美(いなみ)町唯一の高校は、地域合同防災訓練で生徒が高齢者を指定避難所となる学校まで誘導する役割を担うなど、「ヒガハリ」の愛称で地域とのつながりも強い。 冬は午後6時半に完全下校。平日の練習は2時間程度と短いのが悩みだ。グラウンドは陸上部、ソフトボール部、サッカー部と共用。自由に打撃練習はできないため、走塁や守備が練習の中心だ。そんな厳しい環境に追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスによる2020年の休校期間。直接指導できない時期が2カ月以上続く中、技術継続や選手のモチベーション維持を図ろうと、加古川北(兵庫)を08年夏と11年春の2度、甲子園に導いた福村順一監督(48)が取り組んだのがオンライン指導だ。 自身が手本となり、守備での捕球姿勢や走塁の注意点などをまとめた動画を作成。無料通信アプリ「LINE」で全部員に送り、自宅や近所でも取り組めるようにした。黒板を使った座学は限定の動画サイトで公開。ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った直接指導も試みた。原正宗主将(2年)は「1年生は東播磨の野球を知ることができ、(ズームでは)人の目を気にすることなく直接質問ができてよかった」と喜ぶ。 オンライン指導は成果となって表れた。8強が決まった段階で終了となる20年夏の兵庫独自大会は4連勝。秋季兵庫大会は準優勝し、初の近畿大会出場を果たした。 現在もLINEを使い、休校期間中に作成した動画を再送信して基本姿勢の確認作業に使用し、ミーティングができない時のツールとしても利用している。「コロナ前と比較すると選手との距離も近くなった」と福村監督。コロナ下での発見が、チームの新たな指導スタイルの確立につながった。【藤田健志、写真も】=つづく