TPP交渉が難航 なぜ「セーフガード」が焦点なのか
5月29日と30日の2日間、TPPをめぐる大江博・首席交渉官代理とカトラー米通商代表部の交渉がワシントンで行われました。この協議で焦点となったのが、アメリカ産の牛肉や豚肉の輸入が急増したときのセーフガード(緊急輸入制限措置)です。 国々は産物を輸出・輸入し合って必要なものを市場に供給する一方、国内の同業者が圧迫されないよう、安価な海外の品物には関税をかけて、市場価格が大幅に安くなることを防いでいます。しかし、悪天候による農作物の不作や急激な円高などにより、輸入品が急増してしまう場合もあります。そういうとき、国内産業を守るために輸入に制限をかけることをセーフガードといいます。 今回の話し合いでは結論は出ず、次は6月下旬に東京で協議することになりますが、今後のTPP交渉において重要な要素となるセーフガードについて見てみましょう。
「一般」と「特別」の2種類あるセーフガード
セーフガードには、一般セーフガードと特別セーフガードがあります。 一般セーフガードはWTO(世界貿易機関)の前身であるGATT(関税及び貿易に関する一般協定)で決められたものです。商品全般を対象とし、国内産業に重大な損害が生じた場合に発動できます。発動にあたっては、たとえば「ネギの輸入量は国内の収穫量や出荷時期に関係なく増えている」というように、輸入増加と損害発生の因果関係を証明する必要があり、検証にかなり長い期間を要します。利害関係国に対して補償を行うことも求められ、協議がうまくいかない場合は相手国から別の商品で報復を受ける危険もあります。 特別セーフガードはWTOのウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)で輸入数量制限などの非関税措置を関税化した米、小麦、大麦、牛肉、豚肉、乳製品などの農産品について、関税化の代償として認められたものです。輸入量が基準値を超えるか、価格が基準値を下回れば自動的に発動されます。利害関係国に補償を行う必要はなく、WTO参加国の間では報復は禁止されています。