TPP交渉が難航 なぜ「セーフガード」が焦点なのか
セーフガードに求められることは
国内産業の保護が目的のセーフガードですが、発動条件が厳しくなるとセーフガードが発動しにくくなります。TPP交渉参加国の二国間FTAでは、日本のEPAよりもセーフガード発動が制約される規定になっているので、発動できる期間や条件を交渉の中でどう定めるかが重要になってきます。 セーフガードには産業を保護し、雇用を守るメリットがある反面、デメリットもあります。発動されれば価格が上昇するため、消費者は本来安く買えるものを高く買わなければならなくなります。また、輸入相手国の生産者の収益を減らせば、関係悪化にもつながります。自由貿易に多くを負う日本にとって、よいことではありません。まず第1にセーフガードを発動せずに済む関税を設定すること、第2に相手国との連携を密にしてセーフガードを発動するような状況をつくらないことが重要でしょう。 一方で、産業自体の強化も求められます。国も「セーフガードの本来の目的は、国内産業の規模や構造を従来通り維持することではなく、一時的な保護を与えることを通じて、必要な構造調整を行うための猶予期間を提供することにある」という姿勢をとっています TPPの影響が懸念される農業関係者の中にも、TPP参加を見越して、すでに試行錯誤を始める農家や地域の行政担当者がいます。国際競争に対応するための産業の改革が求められています。 (広沢大之助・社会科編集者)