人は2秒で他者を評価する…サイエンスライターが解説!人間の「魅力」を左右する3つの要素「信用できない人はなぜ信用できないのか」
「コミュ力の本質は『人としての魅力』である」と語る、サイエンスライターの鈴木祐氏。そして「魅力」とは、人間が進化するうえで不可欠なものとして培われてきたものだという。私たちが他者を「魅力ある人物」と評価するメカニズムと、その裏に隠された“3つの要素”について、鈴木氏が解説する。 ※本記事は鈴木祐著『最強のコミュ力のつくりかた』(扶桑社)から抜粋・再構成したものです(全3回中の1回目)。
人は2秒で他者を評価する
ここ数年の研究により、私たちは他人と出会ってから2秒で、目の前の相手が信頼に足る人物なのかを判断することがわかってきました。代表的なのはスタンフォード大学の調査で、研究チームは、同大学の新入生たちに教師の講義動画を2~10秒だけ見せ、どのような印象を持ったかを調査。すると、新入生たちの回答は、教師のことをよく知る上級生の評価とそっくりで、特に「信頼性」「共感性」に大きな一致が見られました。その相関係数は0・ 76で、ほんの数秒の判断としては、驚くべき正確さだと言えます。 これはあくまで一例にすぎません。相手の裕福さ、リーダーシップ、恋愛スキル、几帳面さなど、数えきれない量の要素を、人間は数分で査定し、その評価もかなり正確だとわかっています。 すべての査定が終わるまでの時間は平均5分で、ここで出た結論をベースにしつつ、私たちは相手との会話を続けるかどうかを判断します。この査定が、コミュニケーションの第一関門になるわけです。
生きるために“協力”を進化させてきた
人類がここまで正確に他者を査定できるようになったのは、私たちが脆弱な生き物だからです。言わずもがな、ヒトの身体は他の動物より弱く、硬い牙や爪を備えるわけでなく、体を守る甲羅もありません。そんな弱い肉体を持ったまま、有史より前の人類は、脅威に満ちたサバンナで暮らさねばなりませんでした。 いつ猛獣に襲われるかもわからず、つねに食糧不足の不安につきまとわれ、正体がわからない疫病の発生を警戒する。そんな過酷な環境を生き抜くには、仲間たちと相互扶助のコミュニティを作り、生存のリスクを減らすのがベストだったでしょう。 そこで人類は、〝協力〟というスキルを、重点的に進化させました。狩りができない仲間に食糧を分けたり、忙しい母親の代わりに子育てをしてもらったりと、お互いの足りないリソースを提供し合い、どうにか生存率を高めようと試みたのです。 身体の脆弱さに悩み続けた人類にとって、〝協力〟の進化は、まさにゲームチェンジャーでした。