飲酒・パトカーから逃走・時速105キロでも「危険運転」ならず…懲役5年半、遺族「誰もが納得できる法律を」
福井市内で2020年11月、飲酒運転の車が猛スピードで軽乗用車に衝突して大学生2人が死傷した事故があり、27日で発生から4年を迎えた。確定した事故の福井地裁判決で適用されなかった危険運転致死傷罪を巡っては、法務省の有識者検討会が法改正を視野に議論を進める。事故で亡くなった塩●里桜(りお)さん(当時18歳)の父・治さん(58)は「悪質な運転が厳しく罰せられる世の中になってほしい」と願う。(浜崎春香、清水翔)
止まった時間
治さんは24日、家族とともに福井市内の事故現場を訪れた。歩道脇に花束を手向け、数秒間、静かに手を合わせた。「大学を4年で卒業していれば、今年は就職していたか、大学院に行っていたのだろうか。里桜の人生、どうなっていたかな」と想像した。昨日のように思い出される里桜さんとの日々。「20年から自分だけ時間が止まっているような気がする。もう4年かという気持ちです」
事故後、毎年11月27日が近づくたびに現場に置かれた花束の数は少なくなっていると感じる。「世間から事件のことが忘れられているような気がする」。しかし、「暴走」で事故を起こし、里桜さんの命を奪った男に対する治さんの憤りは今も消えない。「飲酒、パトカーからの逃走、時速105キロまで加速。これが危険な運転じゃないなら、何が危険なのか」
地裁は21年9月、争点だった「制御することが困難な高速度」について「ぶれずに直進していた」などと判断。最高刑が懲役20年の危険運転致死傷罪ではなく、同7年の過失運転致死傷罪を適用し、男に懲役5年6月の判決を言い渡した。
数値基準
自動車運転死傷行為処罰法では、「制御困難な高速度」「アルコールの影響で正常な運転が難しい状態」などを危険運転致死傷罪の構成要件とする。しかし、条文が曖昧で、大幅な速度超過でも過失運転致死傷罪にとどまるケースがあり、遺族らからは見直しを求める声が上がる。
こうした状況を踏まえ、法務省の有識者検討会が今年2月から、悪質な運転による交通事故に厳しく対処しようと、議論を重ねてきた。11月13日には、車の速度やドライバーのアルコール濃度について数値基準を設け、超えた場合は一律に処罰することを求める報告書案を提示した。