空を飛びイチゴを運ぶドローン 物流問題解決に向けて中電ウイングが実験へ 岐阜・可児市
障がい者を積極的に雇用している中部電力の特例子会社「中電ウイング」(名古屋市南区)は12月11日、岐阜県可児市で運営するイチゴ農園「中電ウイングファーム」から、ドローンと自動配送ロボットを利用し、名古屋・栄にイチゴを輸送する実証実験を実施します。 川の上空をドローンを飛行させて輸送の効率化を図り、人手不足やコスト高などの課題を抱える物流部門の問題解決に繋げたいといいます。 ただ、現状では、実験で試行される輸送方法には課題も多くあり、これから課題をどう乗り越えていくのか、理想の実現に向けての一歩は始まったばかりです。
収穫したイチゴはこれまで月・水・木・金曜日に週4回、輸送業者がトラックでの陸送を行い出荷していましたが、近年では人手不足に加え、トラックドライバーの残業規制による人件費負担の増加、燃料費の高騰などで輸送コストが過大となっています。これまでの陸送に代わってドローンを組み合わせた運送を試み、輸送コストの軽減を図るのが実験の狙いです。 ドローンに積み込むのは、農園で収穫し保冷バッグに詰め込んだイチゴ10パック(約5キログラム)。農園から北東へ約9キロメートル離れた東鉄バス可児営業所まで、農園に隣接して流れる可児川の支流に沿って、川の上空30メートルから50メートルの高さをドローンが飛行します。 営業所に着陸した後、イチゴはドローンから高速路線バスに積み替えられ、名古屋・栄の停留所に送られます。停留所には自動配送ロボットが配置され、イチゴを受け取った後、松坂屋名古屋店やマルエイガレリアなどの販売所に届けます。ドローンと配送ロボットは中電ウイングの本社で遠隔監視し、イチゴは約4時間で農園から店頭に届く計画です。
今回の実験の結果を踏まえて、ドローンを使ったイチゴ輸送について3年以内の実用化と定期運行を目指している同社ですが、現状では多くの課題を抱えているといいます。 1つ目が、費用対効果。農園で生産しているのは、主に冬から春に出荷する季節商品のイチゴ。生産や出荷の時期が限られるため、ドローンでの輸送は費用対効果が望めずコスト高となってしまいます。採算を合わせるには、通年稼働のほか、通年で販売できる商品の開発に加え、その販路の開拓が必須です。 そのため、地域の生産農家にもドローンを活用した輸送手段の有効性を周知し、農産物のドローン輸送の通年化を目指すと共に、商圏を広げ地域の活性化にも繋げていきたい考えです。 2つ目が、人材育成。事業の拡大に伴い、ドローン操縦者の養成のため、国家資格となっている免許の取得、スキルの習熟といった育成に関連した課題も出てきます。 今回の実験では民家など人口集中地区の通過も一部含んでいるといいますが、事前にルート上の関係各所から許可を得て、歩行者の上空を通過しないなど万全の安全対策がとられドローン飛行を行うとしています。 また、河川および河川敷での飛行についても、国交省が許可した地域であることに加え、河川を管理する所轄事務所の許可が必要だったといいます。 担当者は「ドローンでの輸送は、道路の交通事情に左右されない、陸送のように路面からの衝撃を受けないなどのメリットも多いですが、飛行に伴う規制が多い、採算が取れないなどの課題がまだまだ山積している」話す一方、今回の実験について「イチゴを多くの人に届けるきっかけにしたい」と前向きな期待をのぞかせました。