3度目MVPの大谷翔平、本塁打増と三振減を両立 「速く、高く」でさらに進化
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平(30)が21日、3度目のMVPを満票で手にした。右肘手術の影響で打者に専念した今季は前人未到の「50本塁打、50盗塁」を達成し、本塁打王と打点王のタイトルを獲得。打率もリーグ2位と三冠王に迫った。メジャー7年目の今季も進化を見せつけた大谷について、専門家は打球の速度と角度に着目、「三振を減らし、本塁打を打つという非常に難易度の高いことをやってのけた」と絶賛する。 【表でみる】大谷のハードヒット率は全体2位につけた ■「対左」で進化 今季の大谷は打率3割1分、54本塁打、130打点と、打撃3部門すべてでメジャーでのキャリアハイをマークした。米大リーグ機構(MLB)のデータ解析システム「スタットキャスト」を基に、スポーツのデータ解析を行う「ネクストベース」が算出した数値によると、今季の打球の平均速度は時速154・0キロ、平均角度は16・0度。昨季の151・9キロ、13・2度に比べ、いずれの数値も上がった。打席結果をみても、ゴロの割合は24・3%で、MLB平均の29・2%より少なかった。 ネクストベース上級主席研究員の神事(じんじ)努氏は「ゴロにならないように打球の角度を出した点に技術の改善があった」と指摘する。特に、不得意とされてきた左投手との対戦での進化が顕著で、今季の対左投手の打球速度は150・5キロ、打球角度は14・4度。昨季より3キロ程度速く、3度程度高くなった。 ■芯でとらえる技術 今季は三振の割合も減った。全打席数に占める三振の割合は昨季の23・9%に対し、今季は22・2%に改善。神事氏は、大谷のスイング速度と打球速度の関係に注目する。 スタットキャストで今季から公開された平均スイング速度は122・8キロ。MLB全体で8位と突出してはいないが、打球速度95マイル(約153キロ)以上のハードヒット率(強い打球の割合)は60・1%と、ジャッジ(ヤンキース)に次ぐ全体2位につけた。神事氏は「ボールを芯でとらえる技術の高さがある。一般的にホームランバッターは三振が多くなりがちだが、三振を減らし、本塁打を打つという非常に難易度の高いことをやってのけた」と、高い打率を残した要因を分析した。 ■構えも変化
野球のフォーム分析に詳しい筑波大体育系(野球コーチング論)の川村卓(たかし)教授は、構えの変化を指摘する。大谷は昨季から、バットの長さを1インチ長い34・5インチ(約87・63センチ)に変更。昨季後半はグリップエンドの位置を耳元くらいまで下げていたが、今季は、昨季序盤の上げた状態に戻したという。「バットを振り下ろすことで、バットがボールの下に入り、打球が上がりやすくなる。変更したバットの扱いに慣れ、昨季にやりかけていたことが成功した」とみている。(神田さやか)