石破首相が意欲を示す日米地位協定の改定 有識者は厳しい見方「沖縄県民の望む改定になるかは不透明」
沖縄テレビ
石破総理が意欲を示す日米地位協定の改定は、県民にとって長年待ち望まれた沖縄の大きな課題の一つです。石破総理の一連の発言から有識者は、「県民の望む改定になるかは不透明」で本気度が問われると厳しい見方をしています。 石破首相: 「地位協定を改定していくことが、日米同盟を強化することに繋がると思っております」 日米地位協定の改定などを訴え総裁選を勝ち抜き、新たな総理大臣に指名された石破総理。就任の会見では地位協定の改定について「約20年間、考えてきた」「一朝一夕に変わるとは思っていないが、諦めていいとは思っていない」と述べました。 1952年に、アメリカとの間で日米安全保障条約が結ばれ、その後、1960年にそれまでの日米行政協定に代わる新たな協定として日米地位協定が締結されました。 地位協定では、アメリカ軍基地の間で兵士の移動の自由のほか、公務中の事件、事故に関してアメリカ側に第一次裁判権があり、国内法が適用されないケースがあることから、たびたび「特権」と揶揄されてきました。 1995年県民総決起大会 大田知事: 「一番大事な幼い子供の人間としての尊厳を守ることができなかったことについて、心の底からお詫び申し上げたい」 1995年に発生した少女暴行事件でアメリカ側は、起訴されるまで容疑者の身柄を管理する、地位協定の17条を根拠に日本側への引き渡しを拒みました。 県民の猛反発を受け日米両政府は、地位協定の17条の運用改善に合意し、凶悪犯罪の容疑者の場合のみ、アメリカ側が日本への身柄の引き渡しに「好意的考慮」を払うとしていますが、事実上、その裁量はアメリカ次第となっています。 さらに、2004年に沖国大に墜落したアメリカ軍ヘリの墜落事故では、地位協定の運用を定めた合意議事録を根拠にアメリカ軍によって機体が回収され、警察の捜査は十分に行えませんでした。 国内法が適用されず、まさに特権と言われる地位協定をめぐり、県内からは、長い間「抜本的な改定」を望む声が上がりますが、政府の対応は、これまで運用改善に留まっています。 石破総理が日米地位協定の改定に言及したことについて、国際政治学が専門の沖縄国際大学の佐藤学教授は、「県民が望む改定かは不透明」だと指摘します。 沖縄国際大学佐藤学教授: 「限定的な刑事訴訟法に関わるような所での情報をアメリカ政府から引き出すという事ぐらいはやるかもしれないけど、本当の問題をうんと小さくしたところでの見かけ上改定しましたっていう、お試し改定みたいなね」 1960年に締結されて以降、一度も改定されてこなかった日米地位協定。 石破総理は、改定の手法については、アメリカ国内に自衛隊基地を置くことだと持論を述べています。 石破総理: 「(地位協定を)改定していくための手法として、例えて申し上げれば合衆国に自衛隊の訓練基地を作るということは、軍事的合理性があるものだと考えております。そうすれば、当然地位協定(の改定)というものが必要なものになる」 石破総理は、日米同盟の強化を名目に自衛隊をアメリカにおくことができれば、必然的に日米地位協定の改定が必要になると考えています。 佐藤教授は、石破総理はこれをフックにして改定の糸口にしたい考えではないかと推察します。 沖縄国際大学佐藤学教授: 「アメリカとの軍事協力を進めます。それを進める上での対等な形をすれば地位協定の改定ぐらいはしてちょうだいよと」 ただし、佐藤教授は、「日米同盟の強化と共に沖縄の基地負担の軽減が置き去りにされるおそれがある」と指摘します。 沖縄国際大学佐藤学教授: 「(改定によって)少数に不利益が集中する形だったら、多数は支持しちゃうわけで、そういうなかに沖縄はずっと置かれているっていう事だと思います」 県内では、玉城知事をはじめ党派に関係なく日米地位協定の改定を求めていますが、石破総理がどの様に改定に取り組むのか手腕が注目されます。
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