アウディQ6 E-トロン 詳細データテスト 新プラットフォームの高い実力 質感と操作性は1歩後退
はじめに
PPEという、衛生マスクのような略称を与えられたプレミアム・プラットフォーム・エレクトリックは、新開発のEV用アーキテクチャー。その初採用例であり、2021年のQ4 E-トロン以来初の完全なブランニューモデルとなるのがQ6 E-トロンだ。 【写真】写真で見るアウディQ6 E-トロンとライバル (7枚) PPEはポルシェとの共同開発で、今後はアウディやポルシェのEVに広く用いられる予定だ。そこにはアウディA6やポルシェ・マカン、さらには未発表のモデルも含まれる。 Q6は車名からわかるように、アウディのモデルレンジではド真ん中に位置する。今後、アウディの車名は、EVが偶数、ハイブリッド含むエンジン車が奇数となるので、Q6は実質的にEVレンジのQ5に相当する中型SUVだ。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
PPEは、アウディQ4 E-トロンやフォルクスワーゲンIDの各モデルに使用されるMEBの親戚みたいなものだと思われるかもしれない。しかし、MEBの後継ではなく、より魅力的なテクノロジーを用いる高価格帯のモデルに採用されることになるようだ。 電気系は800Vシステムで、発熱ロスが少ない高電圧とすることで、充電速度や効率の改善を図った。モーターも新型で、最新のエンジンは多くがそうであるように、モジュラー設計となっている。実際、モーターの長さが増すほど、よりパワフルになる。 そのほかにも、よりタイトなコイルの巻き具合やダイレクト油冷、素材変更などが、パワー密度や効率の向上に寄与している。エネルギー消費の削減は、とくに大きな目的だ。それは、Q8 E-トロンの悲惨さを考えれば理解できるだろう。 リアのメインモーターは、一般的な永久磁石同期式。クワトロモデルやSQ6にはフロントに第2のモーターが設置されて四輪を駆動するが、こちらは磁石を使わない非同期インダクションモーター。その利点は、動力を必要としないときにはほぼロスなくフリーに回ることだ。 発売時のバッテリーは2種類で、小さいほうは総量83kWh(実用量75.8kWh)で、エントリーグレードのスポーツに、大きいほうは100kWh(実用量94.9kWh)で、シングルモーターのスポーツ・パフォーマンスとデュアルモーターのクワトロやSQ6に搭載される。 モーター同様、バッテリーパックもモジュラー設計で、1パックは180の角柱セルで構成され、大きいほうは12モジュール、小さいほうは単純にそのモジュール数が少ない。Q8 E-トロンに比べたら、Q6 E-トロンのバッテリーモジュールは、数は少ないが大きい。アウディによれば、配線や接点を大幅に削減し、熱となってしまうエネルギー損失も大幅に抑えたという。 MEBに採用されなかったアイテムとしては、エアサスペンションも挙げられる。Q6でも、今回テストする発売記念のエディション1を別にすれば、SQ6の専用装備なのだが。標準状態の車高は、コイル仕様より28mm低いが、オフロードモードでは最大45mm引き上げることができる。英国仕様のコイルサスペンションは、ほとんどが周波数選択式パッシブダンパーとの組み合わせとなる。 メカニカル面と同時に、デザイン言語も新しくなった。それは、とくにフロント周りに顕著だ。2000年代初頭以来の大きなシングルフレームグリルは健在だが、開口はせず、ボディ同色となっているのでさほど目立たない。上下分割ヘッドライトやリアのライトバーは、最近のトレンドに沿ったものだ。 いっぽうで、ホイールアーチ上のキャラクターラインは、1980年のクワトロのブリスターフェンダーを思わせる。サイドシルの黒いパーツは、バッテリーの搭載位置を示唆しているようだ。