「なんじゃこりゃ!?」な奇抜車がどうして“40年ベストセラー”に? ホンダの「ザ・配達バイク」のスゴさを今こそ称えたい!
配達バイクの定番「ジャイロ」は1980年代の産物
1980年初頭に起きたホンダ、ヤマハの熾烈なシェア争い、いわゆる「HY戦争」最中の1982年、ホンダが斬新な原付バイクをリリースしました。その名は「ジャイロX」。レゴのようなカクカクしたボディと、フロント1輪・リア2輪という斬新なスリーターモデルで、当時のホンダは「新感覚の乗りもの」と謳いました。 【超カワイイ!】もう“レゴのバイク”にしか見えない初代ジャイロX(写真) 「ジャイロ(GYRO)」とは本来、羅針儀を示すワードですが、ホンダではこの頭文字をとって「G=グレート(偉大な)」「Y=ユアーズ(あなたのもの)」「R=レクレーショナル(娯楽の)」「O=オリジナル(独特の)」といった意味を持たせ、「仕事からレジャーまで優れた多目的性を持つ独特の乗りもの」と位置付けました。 正直、やや難しくも思えるコンセプトですが、しかし、実際のジャイロXは、このコンセプトの通り、その機能性・実用性を証明し、さまざまなバイクユーザーに支持されるようになりました。 コーナリング時には、フロントボディが左右にスイングし、リアの2輪部分は、比較的安定感を保つという独特の乗り味であり、特にぬかるみや雪道などの悪路でもスリップしない特徴がありました。
このバイクなしでは成り立たなかった店もある?
また、積載性にも優れており、後には商用車として幅広い場面で採用され、初登場以来、複数回のマイナーチェンジ、フルモデルチェンジを図りつつ今日まで42年間以上にわたり販売される、ホンダの名車の一つにもなりました。 ジャイロXが配達シーンで絶大な支持を受けたことから、1985年には派生モデル「ジャイロUP」をリリース。走行性能よりも積載性と安定感を優先させたモデルで、こちらも2008年までの23年間にわたって生産されました。 さらにジャイロUPと並行して、1990年には屋根を搭載した「ジャイロキャノピー」も登場。都市交通環境の変化や、ライフスタイルの変化に伴って宅配・巡回などのビジネスが増えることを見越して開発されたモデルです。 ジャイロキャノピーは屋根付きで天候に左右されずに移動できる利便性がありました。また、荷室の大きなワゴンタイプが存在し、これは宅配ピザチェーンのデリバリー車として多く採用。ドミノ・ピザの日本の本社には、このジャイロキャノピーが展示されており、同社が「ブランドの立役者」として考えていることがよくわかります。 ジャイロUPが2008年に生産終了になって以降も、ジャイロキャノピーは今日まで生産され続け、今日もなお、宅配・巡回などのビジネスに欠かせないモデルとして活躍中です。