全国から熱いファン集まる、京都の「オオサンショウウオ測定会」に行ってみた
柱に目印を刻み、子どもの背くらべをするのは5月5日だと歌う童謡がある。この歌が象徴するのは子どもの健やかな成長を願う「こどもの日」だが、この世には「オオサンショウウオの日」である9月9日に彼らの成長ぶりを見届けるイベントも存在する。 【写真】オープン前から140人がスタンバイ! 「京都水族館」(京都市下京区)で毎年開催される名物イベント『測って!オオサンショウウオ』だ。交雑種の中でいちばん大きなオスの個体を公開測定するこのイベント。全国から熱いファンが集結した、2024年の会場の様子をリポートします。 ■ 年に一度の「測定会」、オープン前から140人がスタンバイ 姿が「9」に似ていること、9月が繁殖期であることから制定された「オオサンショウウオの日」は、鴨川水系に棲むオオサンショウウオの調査や研究に注力する「京都水族館」が2018年に申請、日本記念日協会に認定された記念日。この日に向け364日前からカウントダウンする同館の熱量が伝播してか、測定会を目指してオープン前から140人以上が集まった。 10時のゲートオープンと同時に、会場となるオオサンショウウオ水槽前をまっすぐ目指す人々。とても落ち着きながらも熱さを秘めていることは、抱きしめられたオオサンぬいぐるみから、肩にかかったオオサンバッグやポシェットから、ひしひしと伝わってくる。5分も経たないうちに後方までぎっしり、見守りびとで埋めつくされた。 イベントがはじまる前、最前列の男の子に「測り方知ってる?」と声をかけたのは展示飼育チーム長の河﨑誠記さん。腕いっぱいに抱えていた大きなオオサンショウウオぬいぐるみの測定が思いがけず繰りひろげられる。朝早くから集まった観客へのサービス精神がたまらない。 ■ 「運命の1日」今年の結果は・・・!? そんなほっこりムードのなか、測定がスタートする。今日の主役は、四条大橋の下で迷子になっているところを保護されたという交雑個体(識別コード:1D84)。なお、他の個体も今日までにすべて測定が済んでいる。この測定会はオオサンショウウオたちの健康管理の一環としておこなわれており、飼育スタッフ曰く「今日の結果次第ではちょっとご飯が減らされるかもしれません」とのことで、当の本人にとっては運命の1日となるのかもしれない。 それを知ってか知らずか、普段から折り重なって隅っこに集まる習性がある生き物だが今日はひときわ下のほうに潜り込んでしまっている。ダイバースーツを着た飼育スタッフの石川薫さんが水槽に入り、しばしのチャレンジののちキャッチに成功すると「おぉぉ」「でかっ!」と大きな歓声があがる。 水槽から出てきたその姿は見るからに大きい!ぬめぬめと測定用のパイプから逃れ、容器から脱走を試みるなど活発に動く1D84に苦戦するスタッフたち。「去年は161cmだったので今年は162とかあるといいですね」と話した河﨑さんだったが、1年が経ったサイズは体長は変わらず161cm、体重は33.32kg(昨年33.4kg)で微減という結果に。日ごろニジマスとウグイを使い分けているというごはんタイムに、大盛りキャンペーンが開催されるかもしれない。 ■ 年々高まる熱量、全国からファン集まる 各方面から注目を集める『測って!オオサンショウウオ』には、この日を目指してくる人も多い。今日のために福岡から来た友人とともに訪れたという男性は、「圧倒的な大きさと存在感のある生き物が京都の川にいるというのがいい」とその魅力を語る。また、「グッズをたくさん買って持って帰るため」大阪からキャリーケースを引いてくる女性の姿も。 会場では、京都大学オオサンショウウオ研究室のマスコットキャラクター「やぽちゃん」や、オオサンショウウオをモチーフにした御輿を担ぐ「はんざき祭り」(※はんざきはオオサンショウウオの別名)を毎年開催している湯原温泉郷(岡山県真庭市)からやってきたPR隊が来館者を出迎えるなど、お祭りムードに溢れていた。飼育スタッフの石川さんは「開館を待つ人も増えていて年々熱量が上がっている」と反響を実感しているようだ。 「京都水族館」では、9月7日~11月29日の期間、五感を使ってオオサンショウウオの特徴を知る体験型企画展『もっと体感!オオサンショウウオ展』を開催中。入館料は大人2400円ほか。 取材・文・撮影/脈 脈子