【社説】レバノン停戦 合意守りガザにつなげよ
まずは停戦合意を着実に履行することだ。それをパレスチナ自治区ガザの戦闘停止につなげ、中東の危機を沈静化させたい。 イスラエルと隣国レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの戦闘を巡り、イスラエルとレバノン両政府が停戦に合意し、27日に発効した。 イランの支援を受けるヒズボラは、ガザでイスラエル軍と戦うイスラム組織ハマスと連帯し、昨年10月からイスラエルと交戦していた。 戦闘はエスカレートしている。イスラエル軍は今年9月にレバノン南部へ地上侵攻を開始し、空爆も激化させた。交戦開始からレバノンで3800人以上、イスラエルでは百数十人が死亡している。 停戦合意は、ガザとレバノンの二正面作戦で負担が増したイスラエルと、指導者を含む多数の幹部を失い弱体化したヒズボラの思惑が一致したようだ。米国とフランスの仲介努力を評価したい。 60日の停戦期間中に双方が主戦場のレバノン南部から撤退し、レバノン軍と国連レバノン暫定軍が監視する。 停戦維持を支援する米国のバイデン大統領は、停戦について「恒久的な敵対行為の停止を目的とした」と述べた。戦火が再び起きないことを切に願う。 イスラエルとヒズボラが合意を履行するかどうかは予断を許さない。 双方に永続的な停戦を呼びかけた2006年の国連安全保障理事会決議は、互いに履行違反が繰り返され、ほごにされた経緯がある。 イスラエルのネタニヤフ首相は停戦合意後の声明で、ヒズボラが合意を破れば再攻撃すると明言した。双方に強く自制を求める。 懸念するのは、イスラエルがハマスとの戦闘に集中できるようになり、ガザへの攻撃が一段と激しさを増す恐れがあることだ。 昨年10月の戦闘開始以降、ガザでの死者は4万4千人を超える。人道危機は深刻になるばかりだ。 イスラエルとハマスに即時停戦を求める20日の国連安保理決議案は否決された。イスラエルを擁護する米国が拒否権を行使したためで、日本など残る14カ国は賛成した。国際社会の大勢は一刻も早い停戦を求めている。 イスラエルとヒズボラの停戦を恒久化するとともに、各国はガザ停戦へあらゆる手段を尽くしてもらいたい。 イスラエルにとってヒズボラとの停戦は、後ろ盾のイランに対処する意味もある。イランとの間で攻撃と報復の連鎖が再燃する事態は避けなくてはならない。 停戦が期限を迎える頃、米国では2期目のトランプ政権が発足している。 トランプ氏が親イスラエルの姿勢を強めれば、中東の和平はさらに遠のく。日本を含む国際社会は足並みをそろえて、トランプ政権に協調を働きかけるべきだ。
西日本新聞