中国で「グリーン水素」の国策コンソーシアム発足 本格普及へ製造から貯蔵、輸送、利用まで網羅
グリーン水素の本格普及を目指す「国策コンソーシアム」が中国で発足した。 中国の国有エネルギー大手の中国石油化工集団(シノペック)は8月21日、グリーン水素のインフラ整備を製造から貯蔵、輸送、利用まで一気通貫で進めるため、「緑色氫能制儲運創新聯合体(グリーン水素イノベーション・コンソーシアム)」の発足式典を開催したと発表した。 【写真】シノペックが新疆ウイグル自治区に建設したグリーン水素製造プラント 同コンソーシアムは国務院国有資産監督管理委員会の指導の下、中央政府直属の大手国有企業(中央企業)を中心に結成。シノペックと国有エネルギー大手の国家能源投資集団(チャイナ・エナジー)が旗振り役になり、企業や研究機関など80近い組織が参画している。
■現状は「グレー水素」がほとんど シノペックによれば、同コンソーシアムはグリーン水素の基礎研究から産業化まで全面的なイノベーションを後押しし、中国におけるグリーン水素の活用を新たな段階に導くことを目指すという。 グリーン水素とは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用して(二酸化炭素[CO2 ]を排出せずに)製造した水素のことだ。それに対して、石炭や天然ガスなどの化石燃料を原料に作られる水素は「グレー水素」と呼ばれ区別される。
業界団体の中国氫能聯盟によれば、中国では2023年に約3550万トンの水素が生産された。だが、そのほとんどがグレー水素であり、グリーン水素は全体のわずか1%だった。 中国政府は「2030年までにCO2 の排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」という国家目標を掲げている。その達成に向けて、中央政府はグリーン水素の活用に大きな期待をかけている。さらに中国各地の地方政府も、グリーン水素関連のプロジェクトを積極的に支援している。
水素エネルギーは(電気やガスなどと同様に)公共インフラとしての特性を持つため、グリーン水素の産業化は(国策によりエネルギー産業を独占する)中央企業が主な担い手になる。しかし現段階では、グリーン水素関連のプロジェクトは採算性の問題を抱えている。 例えば、シノペックが新疆ウイグル自治区のクチャ市に建設した年間生産能力2万トンのグリーン水素製造プラントは、大規模な太陽光発電所との組み合わせで生産コストを大幅に引き下げた。にもかかわらず、黒字化のメドはまったく立たないのが実情だ。