ロピアとトライアル進出の浜松、スーパー顧客獲得競争激化 大容量で低価格、ITも駆使 地元資本「地域密着」で対抗
浜松市内に低価格を売りとする静岡県外小売り2社が相次いで進出し、ショッピングモールやスーパーが多く立地する同市で新たな顧客獲得競争が起きている。11月下旬に食品スーパーのロピア(川崎市)とディスカウント店を展開するトライアルカンパニー(福岡市)が静岡県1号店を開業し、家族向けの大容量商品やITを駆使したサービスで集客している。迎え撃つ地元勢は「ニーズや客層が異なる。日常的に利用してもらえる価値を提供していく」と、地場産品の手厚い扱いや顧客接点の強化など地域密着経営で対抗する。 ■小分け手間減らす ロピア浜松プラザフレスポ店の開業から2週間以上がたった12月上旬の平日正午ごろ、入り口前には入場制限で100人以上が長い列をつくっていた。ロピアを運営するOICグループによると、一般的な地方スーパーの商圏が半径1~2キロなのに対してロピアは10キロ以上。遠方からも客を集め、1店舗当たりの年間売上高は地方スーパーの数倍の約40億円という。 精肉売り場には1キロ以上の大容量でパック詰めされたオリジナルブランドの牛や鶏肉が派手なポップとともに並ぶ。価格を抑えるため大容量商品を多用し、小分けや包装の手間を減らす。支払いも、クレジットカードや電子決済などの手数料負担を避けるため、現金のみにするコスト削減策を採用する。 OICグループの浜野仁志取締役は「地場の商品を扱うと地元スーパーと違いを出せない。全国展開だからこそできる仕入れで独自性を出す」と自信をのぞかせる。
■セルフレジカート ロピアの翌日にオープンしたスーパーセンタートライアル浜松若林店は、24時間営業で食品に加え、衣料品や家電製品も扱う。入店して目を引くのはタブレット端末を備えたセルフレジ機能付き買い物カートだ。 トライアルグループはPOSシステム開発などのITが祖業の一つ。自社開発のカートは、商品のバーコードをスキャンしてかごに入れ、店員が簡単なチェックをするとプリペイドカードによる支払いが完了する。レジ待ち時間を短縮するだけでなく、タブレット画面を通じて客に合わせた商品を提案し、買い上げ点数の向上につなげる。 店舗運営会社の中垣庄二静岡エリアマネジャーは「タブレットは繰り返し操作性を見直し、幅広い世代がカートを利用する。便利で快適な購買体験を提供したい」と話す。 ■「じもの」を充実 対する地元資本のスーパーは「競争環境は激化している」と受け止め、多店舗展開を生かして地域住民との関係強化を図るなど、差別化戦略を強める。 浜松市を中心に35店舗を営業する遠鉄ストアは、11月に三ケ日店を拠点に始めた1台を含め、市内は9台の移動スーパーを稼働。マックスバリュ(MV)東海は市内では3台を運営し、企業内などへ無人店舗の出店も進める。 農産物の品ぞろえは、両社とも農産物輸送のやさいバス(牧之原市)のサービスを利用し、地元野菜の扱いを充実させる。鮮魚は遠鉄ストアでは舞阪漁港からマダイやシラスなど約50種を年に約21トン、御前崎漁港からは約45種、約35トンを調達する。 総菜は、遠鉄ストアがパートを含む従業員からアイデアを募った商品の販売を2023年1月から始めた。これまでにスイーツやパンを含め60商品を開発し、毎月のように目先が変わる商品を店頭に並べている。MV東海は学生と地元食材を使ったいなりずしを企画するなど、地域商品「じもの」の開発や産学連携にも力を入れる。 MV東海は「地域とともに成長する企業を目指す」(戦略部)とし、遠鉄ストアの担当者は「ほしいものがいつも店にあり、ちょうど良い量が買え、おいしい商品を提供することが大切」と強調する。