東北で女子硬式野球の「アイリスオーヤマ杯」初開催 元侍ジャパン女子代表監督率いる履正社が初代王者に
「まさか母校に…」履正社監督が感じた喜び
履正社の橘田恵監督は、特別な思いで決勝を戦っていた。橘田監督にとって仙台大は母校。仙台大では硬式野球部に所属し、男子選手と同じ練習をこなす日々を送った。 新人戦で仙台六大学リーグの女子選手で初となる公式戦デビューを果たし安打も記録するなど、選手として活躍したのち、指導者に転身。履正社は2014年の創部当時から率いている。17、18年には女子野球日本代表監督も務め、侍ジャパン女子をワールドカップ優勝に導いた。
まさに女子野球界のパイオニア的存在と言える橘田監督は「私が大学生の時、120人くらいいる男子に混じって毎日汗水流して野球をさせてもらったからこそ今がある。その中で、まさか母校に女子硬式野球部ができるなんて思ってもいなかったので、すごく感慨深いです」と笑みを浮かべた。創部2年目を迎えた仙台大女子硬式野球部の野球を目にするのはこの日が初めて。母校と戦える喜びを噛みしめながら采配を振るった。 女子野球の普及については「女子プロ野球ができたこと、女子野球日本代表が侍ジャパンに入ったこと、高校野球(全国高校女子硬式野球選手権大会)の決勝を甲子園でできるようになったことなどが大きな要因。地域とのコラボレーションを展開したり、企業さんが誘致してくださったりしていることも良い後押しになっている」と分析する。
「チームが増えると同時に、指導者やスタッフも必要になる。全力で女子野球をやってきた子たちがまた熱い気持ちで野球と携われる場所が増えて、新たな力も借りながら広がっていくのはうれしい」。現役時代、野球と携わりながら生き続けることは「夢の話」だと思っていた。それが現実になった今、橘田監督は常に全力で野球と、選手たちと向き合っている。
試合後に涙も…公式戦さながらの真剣勝負
今大会は単なるチーム間の交流にとどまらず、真剣勝負が展開された。敗戦後に悔しさから涙を流す選手も少なくなかった。秀明八千代の主将・藤崎珠好内野手(3年)はその一人。準決勝で履正社に敗れた直後、目を真っ赤にしながら取材に応じてくれた。 「勝負どころで打てなかった。自分たちが徹底してきたことはやれたのに結果を残せなくて悔しい」。3月に出場した全国高校女子硬式野球選抜大会は初戦で大敗。気持ちが落ちかけたが、今大会で履正社と初対戦できることをモチベーションに、全員で気合いを入れ直して練習に励んできた。それだけに悔しさは倍増した。