【愛国と貧乏】NHK国際放送で中国人アナウンサーはなぜ“不適切発言”をしたのか?
注目を集めたSNSの投稿
不安定なキャリア、リスクと比べて恵まれない待遇に不満を感じていたKは、日本での生活をあきらめて帰国することを選んだ。その前に自爆的な不適切発言をかまして立ち去ったのではないか。 8月26日、中国のSNS「ウェイボー」に、「元NHK中国籍職員」との肩書きのアカウントが出現した。K本人のアカウントと推測され、大きな注目を集めている。 現在までに2回の書き込みを行っているが、自らの動機を説明するものではなく、ポエムのような内容だ。1回目の書き込みでは飛行機の窓から撮影した、夜景の写真とともに「あらゆるコメントには反応しない。すべては22秒(の不適切発言)に濃縮した。すべての真実と真相、過去、現在、そして未来もだ」とつづっている。
2回目の書き込みでもメディアから問い合わせはあったが、話すべきはすべて22秒にこめたと綴り、その後に「現在の日本メディアは歴史の真相を隠しているばかりか、中国の真実の発展も隠している。日本の一般民衆の対中認識は少なくとも10年、いや15年は遅れている」と書いている。
「愛国英雄」として生き残るのもいばらの道
不適切発言とソーシャルメディアの書き込みによって、Kは愛国英雄となれるのだろうか。これもまた厳しい道のりのようだ。 というのもウェイボーのアカウントは日に100万回を超えるアクセス数を稼ぎ出しているが、フォロワー数はまだ3万ちょっとにとどまっている。「よくやった!」と褒めたたえつつも、その数秒後には忘れているユーザーがほとんどだろう。瞬間炎上社会は同時に瞬間忘却社会でもあるのだ。 ウェイボーには投げ銭機能があり、現金やウェイボー独自ポイントを送って書き手を支援できる。1回目の書き込みには原稿執筆時点で91人が支援しているが、そのリストを見てみると、友人の在日中国人インフルエンサーの名前があった。 日本メディアの報道に不満があって賛意を表明したのだろうか、それともこの騒動による炎上が拡大して自分に火の粉が飛んでこないよう、いち早く立場を表明したのだろうか。いやはや、瞬間炎上社会を生きていくのは大変だ。
高口康太