【愛国と貧乏】NHK国際放送で中国人アナウンサーはなぜ“不適切発言”をしたのか?
瞬間炎上社会でのリスク回避?
待遇が恵まれない一方で、「漢奸」(売国奴)扱いされるという不安もつきまとう。親日認定されると炎上するという構図は以前からのものだが、近年ではなんでもかんでも難癖をつけてアクセス稼ぎする炎上焚きつけ系インフルエンサーが跋扈している。 今年3月には中国飲料大手・農夫山泉が槍玉に挙げられた。「お茶ペットボトルのパッケージに書かれた伝統建築は日本文化の宣伝だ」「茶Πという商品名、このΠという文字は靖国神社の鳥居を模している」とこじつけもいいところの批判で炎上、株価が急落した。 この炎上事件の伏線は農夫山泉のライバル企業、飲料大手ワハハ集団の創業者・宗慶後が死去したことにある。宗慶後は中国経済の発展を牽引し外資と戦った素晴らしい人物だ……とほめる流れが、それに比べて農夫山泉はひどいという流れに転嫁し、ついに難癖をつけての炎上につながったわけだ。 どこから火の手が上がるかわからない、瞬間炎上社会・中国。日本の立場を中国語で伝えるアナウンサー、ナレーターの仕事をしていても、いつ自分が巻き込まれるかという不安はあったはずだ。実際、NHKでのお仕事が理由で炎上した事件もある。
21年6月、日本外務省は知的交流事業の成果を発表したが、中国の小説家・蒋方舟(ジャン・ファンジョウ)もその一人であることが明記されていた。これに目を付けたネットユーザーが批判をはじめた。 そして、20年7月放送のNHKスペシャル「巨龍・中国が変えゆく世界 “ポストコロナ”を迎える市民は」での蒋のコメントが中国批判だという話になり激しく炎上。現在にいたるまで蒋は公開の場に姿を現していない。 瞬間炎上社会でリスクを回避するため、中国の文化人やインフルエンサーは細心の注意を払っている(が、それでも完全には回避しきれない)。たとえば福島原発事故の処理水問題だ。 中国ではインフルエンサー経由での宣伝と販売が主流。しかし、ほとんどのインフルエンサーは昨夏の処理水放出から3カ月ほどは日本商品の宣伝を引き受けなかった。その後、世間の空気を読みながら次第に宣伝量は回復していったが、この間にかなりの消費者が中国製品に切り替えた。 今や「処理水? なんだっけ、それ」という忘れられた話題となりつつあるが、それでも一度切り替えた消費者を取り戻すのは難しい。処理水のことを忘れていても、別のブランドを試して不満を感じなければそのまま移行してしまうからだ。 化粧品大手・資生堂は処理水放出が始まった23年第3四半期から中国市場での売上はマイナス成長が続く。中国経済減速の影響もあるとはいえ、一度失った消費者を取り戻し切れていないとみられる。