今年だけで10冊以上、「性教育本」が出版ブーム 背景にある教育への不安
2時間のワークショップ終了後、男の子たちに感想を聞いた。少し高揚した表情で、一人がこう答えてくれた。 「学校の理科で習ったこともあった。新しく知ったことは、未来の自分のためになると思いました。それまで覚えているかはわからないけどね!」
「性教育本ブーム」とその背景
みさとさんとたかおさんは、2018年から「アクロストン」として性教育に関する活動を始めた。みさとさんは言う。 「もともと子どもたちに性について教えることはやりたいと思っていて、どう伝えるかをずっと考えていました。あるとき、クラフト素材を使うやり方を思いついて、『これだ!』と思って始めました。実際に手を動かさないと身につかないので」 子ども向けのワークショップのほか、小学校の保健体育の授業を担当したり、保護者向けの講演で性教育についての悩みに答えたりする。 今年は性教育の本を2冊、出版した。幼児期から小学校低学年の子を持つ保護者の悩みと、思春期の子を持つ保護者の悩みに、それぞれ答えている。
この2冊を含めて、今年だけで10冊以上の「性教育本」が出版された。書店の子育てコーナーに行くと、『親子で話そう!性教育』『おうち性教育はじめます』といったタイトルが並ぶ。著者は、産婦人科医や助産師、人権教育や児童福祉の研究者などだ。「性教育YouTuber」として人気の著者もいる。 産婦人科医の高橋幸子さん(45)も、11月に性教育の本を出版した。「性教育をしたいと思って産婦人科医になった」という高橋さんは、以前から性教育の普及や啓発に力を入れており、小中学校や高校での講演は年間100回以上になる。 一般向けの本を出すことになったのは、小学生の子どもを持つライターと編集者の熱心なオファーがあったからだ。高橋さんはこう話す。 「ここ数年の刊行点数の増加の背景には、世界のスタンダードに見合わない日本の公教育の現状に不安を抱く保護者のニーズがあると思います」