後継者不足の農業、20~30代が担い手に SNS駆使して「儲かる農家」実現に挑戦
農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など、深刻な課題を抱える日本の農業。今、兵庫・淡路島で、20~30代の若年世代の男女が未経験から新たな農業の担い手となって、かつて「3K(きつい、汚い、危険)」と言われた農業のイメージを変えつつある。交流サイト(SNS)を使った農家の収益モデルの構築や、異業種とのコラボレーションなど、さまざまな手法を駆使し、国を支える農業を盛り上げようと模索を続けている。 【写真】タマネギが原料の化粧品作りを手がける斎藤千明さん ■農家に利益を還元するため奮闘 「続けていると腕がムキムキになってしまうんです」。淡路島・南あわじ市を拠点に活動する黒田茉佑(まゆ)さん(27)=神戸市=は、笑顔でこう話し、島特産のタマネギが入った重さ約20キロのコンテナをトラックへ次々と積んでいった。 令和4年春から「農家の孫まっち」の名前でSNSも駆使し、取引先の農家約30軒が生産した農作物を都市部の飲食店などに売りさばく。事業の特徴は「生産農家に野菜などの値段を決めてもらい、買い取る」という点だ。 大阪の広告代理店で約2年間働く間に培った営業力をフル活用する。スーツケースに淡路島特産のタマネギを詰め込んで夜行バスで東京まで足を運び、飛び込み営業をしたことも。努力を重ね、東京のイタリアンレストラン店主からは「こんなおいしいタマネギは初めてだ」との評価も得た。飲食店などの顧客は大阪や神戸、東京など約100軒。 今も農業を営む祖母がかつて「農家は儲(もう)からない」とつぶやいていた。「私自身、『農家の味方』でいたい。農家の人たちに利益を還元するやり方で、農業を続けることに『やりがい』を感じる人が増えてくれれば」。黒田さんはそう語った。 ■3Kでなく3Y「やりがいがある」「夢がある」「役に立つ」 担い手の高齢化が進む農業だが、田舎暮らしや農業そのものに興味を持つ若者は実は少なくない。JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)が令和5年度、10~50代の男女1万人を対象に行った「農業に関する意識・実態調査」によると、37・4%が地方暮らしを希望し、さらに「Z世代」にあたる15歳~27歳では45・1%と高い数値を示していた。 さらに、農業未経験の約8900人中、Z世代では4人に1人(26・9%)が「農業をやってみたい」と興味を示している。