ドンキ流、客の心つかむ値下げ 特売品はパート店員が決める
現状では「恐ろしさが足りない」
店舗を構える東海地方や関東の競争環境は厳しい。アピタ千代田橋店の周囲にもイオンやマックスバリュ、愛知県を地盤とするアオキスーパーなど競合がひしめく。5月中旬にはJR千種駅前に「コスパ最強」を掲げる食品スーパー「ロピア」も進出した。アピタ千代田橋店から車で15分ほどの距離だ。渡辺氏は「現状のアピタやピアゴには競合から見て恐ろしさやうっとうしさが足りない」と話す。 「価格総選挙はリブランディングに近い。『七三分け』から『モヒカン』になるくらいの変化をしたい」と渡辺氏は語る。アピタ千代田橋店の高橋食品副店長も「価格面でのイメージを刷新し、鮮度と価格で信頼を得られる最強の店舗をつくる」と意気込む。 ユニーの親会社PPIHが5月13日に開いた決算説明会でも競合へのライバル心を隠さなかった。プレゼンテーションのさなか、PPIHの吉田直樹社長など居並ぶ幹部たちの後ろにあるモニターには白地に「闘うユニー」の5文字だけが大きく映し出された。「競合店対抗を徹底する」。ユニーの片桐副社長は強調した。 足元では物価高が消費者の「値上げ疲れ」を招き、節約志向を強めている。帝国データバンクによると、24年は国内の食品メーカーが最大年1.5万品目を値上げする見通し。年3万品目前後が値上がりした22~23年からは減るものの、原材料費や物流コスト、人件費の価格転嫁が続く。 PPIHの吉田社長は「意表を突くような施策を増やし、顧客のハートをつかみたい」と語る。長らくデフレが続いた日本。物価高は小売業界の競争に新たな局面をもたらしそうだ。野村総研の下氏は「物価上昇分の価格転嫁が難しい中、従来にはない集客の話題をつくり売り場全体で利益を確保する策がますます重要になる」と指摘する。
梅国 典