高度経済成長直後のバブル期、新規事業にガンガン投資も尻すぼみした多くの日本企業…「カゴメ」が“トマトの会社”から“野菜の会社”への変化を決めた理由
現在のカゴメ カゴメは長期ビジョンとして、2025年までに「トマトの会社」から「野菜の会社」になることを掲げました。多様な野菜をさまざまなかたちで供給することで、野菜の消費量を増やし、人々の健康寿命の延伸に貢献したいとしています。 この長期ビジョンのもとで、さまざまな新規事業の展開をはじめています。そのひとつが『プラントベースフード』です。動物由来の原材料を配合せず、植物由来の原材料のみを使用した食品のことをいいます。植物性食品を取り入れるライフスタイルに対応するとともに、サステナブルな食品として注目されています。 この事業で開発されたふわとろの卵の食感や色合いは、ニンジンや白インゲン豆で実現したとのことです。 これに関連する事業として、野菜による食生活の改善と健康増進に貢献するために、簡単に野菜摂取量を計測できる『ベジチェック』を開発し、これをレンタルする事業やセミナー・研修事業も展開しています。 さらに、トマトをはじめとする植物栽培や農業の分野でも技術開発を進め、野菜の苗木販売や営農指導など幅広く事業展開をはじめています。カゴメの食品関連事業に原材料を供給し、上流に位置する農業分野に進出するものです。 既存事業である食品加工と農業は異なる事業分野ですが、カゴメは日本で初めてトマトの栽培をおこなった歴史をもち、十分な経験と技術を保有しています。農業分野に展開する先には、今後大きな事業展開の可能性があるのではないかと思います。現在のカゴメのCFTチャートを図表2に示しました。 F(機能)を「トマトのパイオニア」から「野菜による健康の提供」へと変化・発展させ、新しいF(機能)のもとでプラントベースフードやベジチェックなどの事業を展開しています。 それと同時に、「野菜づくりのサポート」といった新しいF(機能)を設定し、従来から社内に保有していたアグリテック(農業関連の技術)を活用して、家庭菜園や農業者向けの事業を展開しようとしています。 図表2のいちばん上の三角形である、主にトマトジュースやトマトケチャップを販売していた事業からさまざまな新規事業が派生し、CFTの明確な設定により発展していることが見て取れるでしょう。 中野 正也 株式会社グローバル事業開発研究所 代表取締役 ※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
中野 正也