追い詰められてからの「知らんがな」で大逆転。番組打ち切りの危機を打破した川島明の大喜利力
他の番組と同じことはしないというルール
無風状態から一歩前へこぎ出すために、バラエティーを愚直に続けることにこだわった。「他局と同じことをしても勝ち目はない」という思いもあった。番組で流れるVTRが芸人のボケを最大限に生かす方針に切り替わったことも、スタジオの雰囲気をよくしていた。 「数字が悪くてもブレなかったのは、何があってもバラエティーを貫くという姿勢があったからでしょうね」 こんなエピソードがある。同局で生中継していたゴルフのマスターズで松山英樹が優勝した。長い歴史のある世界的大会で、アジア人は初制覇である。 だが、ゴルフ中継の直後に始まった「ラヴィット!」では、松山の活躍に川島が「優勝おめでとうございます」とたった一言触れただけで、すぐに通常のバラエティーに戻った。他局や他番組がこぞってこのニュースを取り上げる中で、その頑なさが視聴者の間で大きな話題になったのはいうまでもない。 時事性のあるネタは扱うべきという声もあったが、それこそ他の番組と差別化できなくなる。だからこそ、スポーツの大きな話題もスルーした。 朝からバラエティーを放送し続けるマイペースさは静かに人気を獲得していった。SNSでいじられればいじられるほど、その声は番組の追い風になっていった。
目指すは大人のお子様ランチ
番組の魅力のひとつに生放送であることが挙げられる。生にはハプニングがつきもので、視聴者は今日は何が飛び出すのだろうと興味を持って見てくれる。小さな進行のトラブルは日常茶飯事だが、収録だったらカットされるような発言も電波にもれなく乗ると川島は笑顔になる。 「ぼる塾の田辺さんがベーグル田辺と名乗ったことに対して『北斗の拳のウイグル獄長みたいですね』と突っ込んだ一言は、個人的には会心の一撃でした。すぐにエゴサしましたが、SNSでは40歳以上のおっさんしか笑ってなかった(笑)。収録だったらカットされてますよね」 こういった川島や出演者の奔放さは男性ファンの心もつかんでいる。 「最初は女性を重点的に狙っていたんですけど、あるときからおしゃれ路線をやめました。そこからは男塾や競馬の話もするようになった。気が楽になりましたね」 みんなが好きなものを節操なくやる。川島はそのスタイルを「大人のお子様ランチ」と評する。 「大人になると手打ちそばに塩をつけて食べたりする。それもおいしいでしょうけど、本当は家に帰ってチキンラーメン食べたいよねって」