アウディ、中国で新ブランド投入 EV市場で日欧勢巻き返しへ
中国勢の脅威にさらされているのはアウディだけではない。日本勢も同様だ。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの日本メーカー3社の24年1~9月における中国での新車販売台数は、合計で232万台強と前年同期比で16%減少した。トヨタと日産が約1割、ホンダが約3割減少している。 日本勢も巻き返しに動き出している。今回の広州モーターショーでは、日産と東風汽車集団の合弁会社「東風日産」はセダン型のEV「N7」を発表した。25年上期中に発売する予定で、中国の自動運転スタートアップのモメンタと提携し、同社の先進運転支援システムを採用する。 東風日産はさらに広州モーターショー直前の11月12日には、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)との提携を発表した。ファーウェイの独自OSを使った「スマートコックピット」の開発で協力していくという。 トヨタは、広州汽車集団との合弁会社「広汽トヨタ」で多目的スポーツ車(SUV)型のEV「bz3X」を披露した。先進運転支援システムには日産同様、モメンタの技術を搭載する。ホンダも中国企業との合弁会社2社が4月に発表したEVで音声認識大手の科大訊飛(アイフライテック)など中国企業の技術を活用する。 日系自動車大手が中国企業の技術を活用する流れは、24年4~5月に中国・北京で開催された「北京国際自動車ショー(北京モーターショー)」以降、加速している。EVや自動運転技術で先行する中国EV大手に追いつくためには正しい判断なのかもしれない。 ●中国勢は地図なしの自動運転 もっとも、中国EV大手もEVの次を見据えて自動運転を軸とする「ソフトウエア定義車両(SDV)」の開発に軸足を移しつつある。今回の広州モーターショーでも小米が「シャオミHAD(Hyper Autonomous Driving)」と名付けた運転支援技術を発表した。人工知能(AI)が周囲の状況判断や操舵(そうだ)を担い、高精度の地図が不要となることをアピールした。 浙江吉利控股集団傘下の高級EVブランド「Zeekr(ジーカー)」もAIを活用して地図が不要となる自動運転システムを発表した。これまでに比べて運転の効率が11%高まり、事故の発生確率が15%減るとする。24年末までに既存車種のソフトウエアをアップデートしていく計画という。 巻き返しに向けてブランド刷新や中国企業との協業を加速する外資に対して、自動運転など「SDV」でさらなる一手を繰り出す中国新興企業――。中国のEV市場が成熟する中、日欧企業に残された時間が少なくなってきているのは確かだ。
佐伯 真也