「解雇規制緩和」が注目される今、50、60代がすべき「リストラされても困らない」対策とは
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、今回は中高年のリストラ対策を語る。 中高年、シニアとなれば、リストラからの再就職の難易度も上がるし、若手よりもリストラの対象ともされやすくなってしまう。もし、リストラの対象になってしまったら? その場合の対応策とは?
日本はリストラされやすくなる?
毎年のようにどこかしらの大企業のリストラのニュースが出ているが、2024年も様々な企業のリストラのニュースがあった。資生堂、オムロン、カシオなどに関するニュースは印象が強い。 海外のテック企業のリストラも昨年に引き続き耳にした。アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、メタなど、「GAFAM」と謳われた国際的なテック大手も不採算部門の解雇やレイオフなどを行っている。 折しも自民党総裁選挙では、「解雇規制緩和」が争点の一つとなっている。世界的に見ても解雇のハードルが高い日本の労働関連法を見直し、企業が労働者を解雇しやすくすることで、雇用の流動性を高めようとする動きだ。 これまでにも「解雇規制緩和」が検討されたことはあったが、多くの反発があり、実現しなかった。今回の自民党総裁選で話題に上った「解雇規制緩和」についても、実際に様々な声が上がっている。 では、将来の制度の変化についてはさておき、現状の制度の中でもしも自分自身がリストラの対象になってしまったら、あるいはリストラの候補になりそうになったら、どうすればよいのだろうか。 今回は、ただでさえ転職や再就職が難しくなる中高年がリストラの危機に遭った場合の対策についてまとめる。
リストラとはそもそも何?
ここまで「リストラ」と無造作に連呼しているが、もともとの英語の「re-structuring」と日本での「リストラ」は意味が異なることに注意が必要だ。英語では「組織再編」に近い意味となるが、日本では単に「整理解雇」の意味合いが強い。 解雇には、整理解雇、普通解雇、懲戒解雇などがある。労働者に成績不良などがあった場合の普通解雇や懲戒解雇でも、会社が自由に解雇できるわけではないが、業績不振などによる整理解雇も法律で厳しく制限やルールが設けられている。簡単に言うと、解雇の前に様々な可能性を探ったり、努力をしたりできなかったのかが問われる制度になっている。 また、厳密にはリストラのニュースでよく聞く「希望退職制度」と「リストラ」は異なる。しかし、希望退職は業績悪化にともない実施され、退職する定員に達しない場合は整理解雇などへ進むために、「リストラの前段階」と認識されている。 ニュースで聞くものはほとんどが大手企業の希望退職の話であるが、これは解雇のハードルがそれだけ高いことの裏返しだ。 たとえば1カ月以内に30人以上を解雇する場合、企業は大量雇用変動届をハローワークに提出しなければならない。また、その際には再就職援助計画と呼ばれる計画の作成も法律で企業の義務となっている。これは、人材紹介会社にリストラを行う側の企業が料金を支払って解雇される社員の仕事探しを行う、いわゆる再就職支援がポピュラーだ。 この再就職援助は、定年後の再雇用を含めて、企業が45~70歳の社員を解雇する場合にも義務付けられている。つまり、中高年を解雇する場合でも、大量リストラと同じような支援の必要が企業にはあるのだ。