「解雇規制緩和」が注目される今、50、60代がすべき「リストラされても困らない」対策とは
何度もリストラを攻略したシニアの失敗とは
このように、中高年の解雇では再就職援助措置が企業に求められているにもかかわらず、実際にはあまり支援が行われないままクビにされてしまう中高年は多い。あるいは、ちょっとした再就職支援が行われても、なかなか次の仕事が決まらないというケースも多い。実際にどういったシニアが苦戦しているのか、一部をご紹介しよう。 とある製造業の技術者で、リストラの対象に入っているという60代前半の方がいた。その時が人生で初めてのリストラではなく、何度かリストラにあい、その度に次の職場に能力を買われてリストラを攻略してきたという。 しかし、60代のリストラはそれまでとは違い、次の仕事がまったく決まらなかった。そのシニアは「60歳を超えただけでこんな目に遭うなんて」と年齢のせいだと感じているようだった。実際、年齢によってハードルが上がった面もあるだろうが、それよりもそのシニアが持つ技術へのニーズが低下したことが大きい。特に製造業では、製品のニーズが下がるとその製品の専門人材へのニーズも下がることがよくある。 私たちは「多少給料が下がっても、近い他の製品の工場はどうか?」と勧めたが、そのシニアはそれまで自身が歩んできた製品ジャンルから離れることを嫌がり、その後も仕事が決まらなかった。 ほかに、大手企業の営業や間接部門、つまりホワイトカラーの元管理職などでもリストラされて再就職を希望する人は多い。彼らの希望職種は、営業や企画といったリストラ前の職種そのままがほとんどだ。中には「管理職希望」と言い切るシニアもいる。 当たり前であるが、シニアの管理職中途採用はそこまで求人件数が多くない。営業などは以前よりもシニア求人が増えてきているが、まだまだ現役世代の職種の人口に比べると求人が少ない「狭き門」だ。こうしたシニアも当然なかなか決まらない。
実際にリストラされたらブランクを開けるな
では、中高年がリストラや希望退職の対象になった、あるいはなりそうな場合に、どうすればよいのか。その対策をお話しする。 まずは、「新たに学ぶ姿勢を持つ」ことが大事になる。 これまで培った経験やスキルは、シニアの最大の武器となるが、それだけでは転職・再就職を成功させられない。持っている経験やスキルの価値が、現在の転職市場ではそれほど高くない場合もあるし、新しい職場で求められるすべてを最初から網羅できている人も多くはない。 次に、「社内や労働市場での自身の価値を正しく理解する」ことだ。 社内の職位や給料がそのまま価値とは言えないのは言わずもがな。もちろん、転職市場でそれまでの会社の立場や給料はスライドできるわけではない。今の職場でも応募先でも、自分は何を求められているのかを理解することで、慰留や採用が近づくだろう。 特にシニアでは、机上の知識よりも実務経験が重視される。老後のキャリアを考える中で十分な実務経験が得られない仕事に就いている人は、副業などで実務経験を積むことも考えたい。指示された仕事をこなすだけでは、価値につながる経験・スキルを得られないことも多いので、その場合も副業や能動的な学びが必要になる。 また、「自社の制度やルールとその実態を理解する」ことも必要になる。 当たり前であるが、自社の制度やルール以上に恵まれた特例などが得られるわけはない。逆に制度やルールがあっても、実態はそれが守られないケースはある。ただ、制度やルールは事前に確認できるし、その実態も他の社員の待遇を見ていれば察しが付く。準備は早く始めるにこしたことはない。 いずれにしても、早め早めに自身の価値を最大化するための準備を進めていきたいところだが、実際にリストラされてしまった場合は、自身の価値を最大評価してくれる次の職場を探すよりも、ブランクを開けないことと重視したほうが、長い目で見た老後のキャリアではプラスになる場合が多いだろう。 【中島康恵】 50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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