新型「EX90」から見るボルボが描く電動化の未来、「2030年までの完全BEV化」方針は撤退だが
試乗した「EX90 Twin Motor Performance」は最上級グレードにあたり、前後のモーター出力の合計は実に517PS、910Nmにも達する。リチウムイオンバッテリーは容量111kWhと大きく、航続距離は580kmとされる。 ■際立つ静粛性、乗り心地も上々 その走りは、さすがに余裕たっぷり。2.5トンを超える車重をものともせず、軽やかに発進し、加速していく。 しかも、その際の静粛性の高さはまさに際立っている。電気モーター、インバーターなどが発生するノイズ、さらにはロードノイズ、風切り音などが徹底的に抑え込まれているのだ。BEVだから当然静かなわけではない。制振材の入念な配置、液封式のサスペンションブッシュ、高剛性化されたサブフレームの採用など、入念な対策の賜物である。
乗り心地も上々。ボルボがセミアクティブと称するデュアルチャンバーのエアスプリングに電子制御ダンパーを組み合わせたサスペンションは、22インチの大径タイヤを履くにもかかわらず、ふんわりと表現するのがふさわしい柔らかさを実現している。前席に居ると、ちょっと柔らかすぎるのではとも思うのだが、2列目はとても快適。良好な前後重量配分もあり、クルマが前後左右に揺れる動きが少ないからだ。 ハンドリング性能も、とてもナチュラルな印象。車重はかさむが重心は低く、しかもリアには左右輪に最適な駆動力を伝達するトルクベクタリング機構を備えるおかげだろう。ボルボらしく、走って楽しいというよりは状況問わず安心して操ることができるという印象である。
なお、このトルクベクタリング機構はクラッチを使ったもので、他の機能として巡航時に後輪の駆動力をカットすることも可能。走行抵抗の低減による電費向上につなげている。 北欧テイストが漂う落ち着いたたたずまいや穏やかな乗り味といった誰もがボルボに期待する要素を見事にアップ・トゥ・デートなものに進化させたEX90が、ブランドのフラッグシップにふさわしいクルマに仕上がっていることは間違いない。 ■本国価格は円ベースで2000万円弱