新型「EX90」から見るボルボが描く電動化の未来、「2030年までの完全BEV化」方針は撤退だが
BEVと内燃エンジンを積むふたつのフラッグシップを一堂に揃えて、かつそこで電動化の方針転換を発表する。これが、EX90のデリバリー遅れを逆手にとった戦略なのだろう。 しかしながらEX90の試乗を行った9月2日にその現場では、当然決まっていたはずの方針転換の件は一切伝えられなかった。そこには少しモヤモヤさせられたのも事実である。 ともあれEX90は、SPA2(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー2)と呼ばれるBEV専用プラットフォームを用いて生み出されており、全長5037mmというXC90よりやや大きなサイズのボディを持つ。車体の前後に電気モーターを搭載し、その間の床下にバッテリーを敷き詰めるパッケージングはBEVの定番的なものだ。
■トータルでサステイナビリティに配慮 目をひくのはクルマ全体で約15%の再生スチール、約25%の再生アルミニウム、約48kgの再生プラスチックとバイオベース素材が使われていること。これはボルボ車としてもっとも多い量だという。 他にも、シート表皮に再生ペットボトルなどから作られた合成皮革“Nordico”を用いるなど、単に動力源を電動化するだけにとどまらず、トータルでサステイナビリティに配慮する姿勢はボルボらしい。
EX30と共通のデジタル表現で描かれた“トールハンマー”ヘッドライトを用いる外観では、フロントウインドウ上部の張り出しに目が行く。ここに収まるのはLiDAR。カメラ、センサーなどと協調して車両周辺のセンシングを行い、さらに地図データとしてGoogleのHDマップを用いることで、精度の高い運転支援を可能にする。見据えているのは将来のレベル3、もしくはそれ以上の自動運転である。 そしてインテリア。ハードスイッチを減らして、縦型のセンタースクリーンへの機能を集約した室内のインフォテインメントシステムには、Googleのアプリ、サービスが組み込まれている。NVIDIAのDRIVEプラットフォーム、クアルコムの「Snapdragon Cockpit Platform」を、件の自社開発ソフトウェアでドライブするわけだ。