習近平、絶望…!「トランプ2.0」の熾烈な対中制裁に「対抗手段ゼロ」の衝撃
日中関係のあり方
かつて松本重治氏は「日中関係が米中関係によって決まる」と指摘したことがある。この指摘は今の日中関係についてもいえる。トランプ2.0において日本にとって不都合なのは、安倍元首相が暗殺されトランプ氏とのパイプが失われたことである。自公連立与党は衆院選に大敗し、不安定な政権運営を余儀なくされている。内政が安定しなければ、強い外交戦略を展開できない。 振り返れば、3年間続いた岸田政権において、就任当初の岸田首相(当時)はしたたかな外交を展開すると述べていた。正直にいうと、岸田政権の外交を考察して、したたかさはほとんどない。日米同盟の重要性をいつも強調されたこともあって、日米関係は悪くない。しかし、日中関係はまったく改善されていない。中国は日本の水産物輸入をいまだに再開していない。中国で拘束されている日本人ビジネスマンも解放されていない。中国政府はビザなしで中国に渡航できる国を増やしているが、日本は対象になっていない。 一期目のトランプ政権をもとに考えれば、トランプ氏は同盟国に対して特別に配慮しないことが考えられる。故安倍首相というトランプ氏とのパイプを失った日本にとって独自の外交戦略を構築しないといけない。とくに気を付けないといけないのは米中対立が激化した場合、それに巻き込まれない戦略を事前に用意しておくことである。 日本経済はかなりのレベルで中国経済と一体化している。自動車産業を例にあげれば、日本では、1年間400万台ぐらいの車が売れているのに対して、中国では、3000万台を超えている。日本の自動車メーカーにとって中国市場は決して攻めやすい市場ではないが、失っていい存在でもない。 岸田政権の対中外交の最大の落ち度といえば、日中首脳の相互訪問を再開することができなかった点である。石破首相はAPECで習近平主席との首脳会談に意欲を示している。正しい考えだが、具体的な戦略がみえてこない。トランプ2.0で米中関係がさらに迷走する可能性を考えて、日中関係をいかに安定させるかが喫緊の課題となっている。 最後、これからの日中関係を考えて、石破政権にアドバイスすることはただ一つである。中国人が面子を潰されるのは一番嫌いな民族である。したがって、石破政権の中国戦略についていかにして相手の面子を潰さずに、実利を取るかを考えなければならない。
柯 隆(東京財団政策研究所主席研究員・静岡県立大学グローバル地域センター特任教授)