北極圏のツンドラが炭素の排出源になり、気候危機を加速させている(海外)
巨大な陥没穴、ビーバーの進出、そして極地の山火事
温暖化に伴い、アラスカのツンドラ地帯に木々が生い茂るようになり、そこにビーバーが進出してきてダムを建設し、水路を変えている。 シベリアでは永久凍土層の融解に伴い、地面に巨大な陥没穴が形成され、その数が急速に増えている。 これは極端な例ではあるが、融解と解凍は地球の北極圏全域で進行している。年ごとに気候が激しく変動していることとと相まって、こうした変化は北極の風景、生態系、そして人々の生活に大混乱を引き起こしている。 「このような劇的な変化により、地域社会は計画を立てることが難しくなり、安定した氷や雪、気温に慣れている人々にとって安全面での問題を引き起こしている」とムーンは述べた。 ムーンは、アメリカ地球物理学連合(AGU)の秋季大会で、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の年次報告書「北極圏報告カード」について発表した。それによると、北極の地形に重大な変化があることが明らかになった。つまり、北極のツンドラでは、針葉樹林帯が大気中の炭素を吸収するものの、もはや炭素の吸収源とは言えなくなり、今や排出源となっている。 「炭素の吸収源から排出源への移行は、世界的に懸念されている」と、ウッドウェル気候研究センターでツンドラを研究している科学者のブレンダン・ロジャーズ(Brendan Rogers)は述べた。 また、ツンドラの炭素排出量は今のところ比較的少ないが、「その移行こそ、我々が懸念していることだ」と付け加えた。 この移行は、極地の大規模な山火事がツンドラの植生とそこに蓄えられていたすべての炭素を焼き尽くしたことが一因となって起きている。加えて、融解した永久凍土に含まれる植物の残骸を、土壌中のバクテリアが分解する際に、二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスであるメタンが大量に放出されることも一因となっている。 一方、北極の気温上昇は、グリーンランド氷床をはじめとした氷の融解を促進させており、世界的な海面上昇の主な原因となっている。そのため、沿岸都市ではすでに洪水が増加している。 例えば、ボストンからサンディエゴに至るアメリカの沿岸都市では、1950年以降、十年ごとに洪水の日数が増加していると、アメリカ環境保護庁(EPA)が報告している。
Morgan McFall-Johnsen