米イラン「囚人交換」合意で不安なバイデン政権「利害得失」
8月7日、訪日して岸田文雄総理(右)と会談したイランのアミール・アブドラヒアン外相(左)。緊張緩和の先駆だったのか[首相官邸HPより]
米国とイランが囚人の相互解放で合意した。双方とも5人の被拘束者を解放し、米国制裁によって韓国で凍結されていたイラン資産約60億ドル(約8700億円)がイランに送還されるという大型の合意である。核開発問題、ロシア・ウクライナ戦争でのロシア支援、反スカーフデモの弾圧など、あらゆる面で米国はイランを非難してきた。いがみ合う両国が合意に達した事実は入念な秘密外交を想像させる。 両国は奇妙にも利害を共有するという暗黙の了解が成立している。米大統領ジョー・バイデンは今回の合意で中東での波乱を封じて来年の大統領選を乗り切るという目論見だ。だが打算先行に足をすくわれる懸念がついて回る。 長身で目立つひげ、ニコニコした顔の男性が8月10日の囚人解放合意発表の4日前、イランから来日した。外相のアミール・アブドラヒアンである。実質1日だけの日程で岸田文雄総理表敬、林芳正外相らとの会談を精力的にこなし、都内のイラン大使館では少数の記者団に一時間にわたってイラン外交を語った。
本文:5,048文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
杉田弘毅