【プロ1年目物語】ライバル選手に異例の「オカダコール」も…6球団競合のゴールデンルーキー岡田彰布
「ルーキーを最初から試合起用することはない」
その性格やキャラクターもプロ向きで、ドラフト直後から大阪の岡田フィーバーは加熱する。背番号16、契約金6500万円のゴールデンルーキー。だが、ひとつだけ問題があった。阪神の三塁には、79年に48本塁打を放ち、ホームラン王に輝いた2つ年上の新たなミスタータイガース掛布雅之が君臨していた。実は、戦力面で即戦力のサード岡田を唯一必要としない球団が阪神と言われていたのである。岡田は日米大学野球では遊撃を守ったこともあったが、ショートは前年にトレード獲得した真弓明信が売り出し中だ。内野のポジションは二塁か、一塁しかない。岡田の父も息子の守備位置に頭を悩ませ、指名挨拶の席で球団関係者に「合宿所に入らず自宅から甲子園球場に通わせて、三塁手として使ってほしい」と異例の条件を出したほどだった。 本人もそれに呼応するかのように、1月の合同自主トレで「サードの岡田です」と挨拶。主砲とのポジション争いに挑む覚悟だったが、ドン・ブレイザー監督はルーキーのコンバートを考え、さらに2月のアリゾナキャンプ中に元ヤクルトの内野手デーブ・ヒルトンを獲得するのだ。岡田の一塁転向が現実味を帯びるも、ヒルトンは肩を故障しており一塁しか守れないことが判明したため、背番号16の外野起用までが取りざたされる。話が違うじゃないか……岡田本人もキャンプ中の週べインタビューで戸惑いを口にしている。 「セカンドなんか、絶対守れんと思いますよ。守りに神経使うでしょ。(中略)ドラフトで決まった時、インタビューでいったじゃないですか。最初からコンバートされるのはいやだって……」(週刊ベースボール1980年2月25日号) 関西ではすでに岡田のレギュラー起用前提の報道が先行し、小津正次郎球団社長も国際電話で「岡田を使え」と進言するも、ブレイザー監督の答えは「ルーキーを最初から試合起用することはない」とつれないものだった。大阪出身の岡田にとって地元阪神ファンの期待は痛いほどに感じていた。 「(ファンを)裏切らないように頑張らなければ……。ぼくの入団、ちょっと反響がすごすぎたでしょ? 2~3年ガマンしてレギュラーの座につくとか、そういう立場じゃない。最初から出場してもあたりまえという感じが周囲にあるでしょ」(週刊ベースボール1980年2月25日号)