【バレー】ミスをいかに乗り越えるか。全国大会で八条中男子の監督がリリーフサーバーへ示した理解「大人でも緊張するものですから」
大会初戦で優勝候補筆頭の安田学園中と対戦することに
バレーボールの「第54回全日本中学校選手権大会」(以下、全中)が8月22日から25日にかけて福井県で開催された。男子日本代表のエース髙橋藍を中学生時代に指導した千代裕介監督が率いる八条中(京都)は、予選グループ戦突破を決めた試合でリリーフサーバーがきらりと輝いた。 【ギャラリー】日本一のチームに挑んだ夏。八条中の全中での模様 近畿大会を3位で通過し、全中出場を決めた八条中。予選グループ戦の初戦で、結果的に大会を制する強豪・安田学園中(東京)と対戦することになったが、千代監督は前向きにとらえていた。 「日本一を目指すチームと公式戦で真剣勝負ができるわけですからね。いい機会をいただけたな、と。それに同じ中学生なので、開き直って、しっかりと通用する部分を発揮すれば打開策は生まれるでしょうし、得点も重ねられるだろうと踏んでいました」 0-2(10-25,22-25)で敗れたものの、相手の高い集中力に屈した第1セットから一転、第2セットでは「選手たちが『いける!!』と思える瞬間もありました。その波に乗りながら、自分たちから攻めるバレーを展開したので。あれほどの力を持った安田学園中とやりあえました」と千代監督。「客観的に見ても、取れて18点ぐらいかな、と(笑) 22点も取れるとは思っていませんでした」と目尻を下げた。 強敵に肉薄できた要因の一つは、マインドの持っていき方にあった。 「勝ちにこだわったり、受け身になると、どうしても選手たちのよさが消えてしまいますから。ミスをしたあとに、技術面以外のところで話をしながら、ゲームに向かうように促していました」
敗者復活戦でリリーフサーバーとして投入された3年生の大失敗
続く敗者復活戦へは「切り替えるよりも、むしろここに照準を合わせていました。安田学園中に集中力を削ぎ落とされるよりも、全国大会での固さや緊張感をほぐしなが、勝ち上がっていこう」(千代監督)と心して、桑山中(山口)との試合に臨む。こちらは2-0(25-12,25-6)と力の差を見せつけて勝利したわけだが、そこでは八条中流のメンタルコントロールを象徴する場面があった。 第1セット、リリーフサーバーで投入された3年生の住田康晟は「とりあえずネットにかけないように」と心がけていたものの、放ったサーブはネットの、それも中段に突き刺さった。 「自分にとっては全国大会自体が初めてだったので。第1セットが終わるまで、ずっと泣いていました」(住田) その場面を千代監督は、ほほえみながら振り返る。 「そりゃあ大人でも、大舞台でサーブ1本を打つのは緊張するもの。ましてや中学生ですから」 それでもチャンスは再びやってきた。第2セット、チームが23点に到達した時点で住田がもう一度、リリーフサーバーとして送られる。「自分を信じて打ってこい!!」と千代監督の激が飛んだ。