「年明けからハチャメチャすぎ」『こち亀』に登場した懐かしの「お正月名エピソード」
規格外すぎるお巡りさん・両津勘吉が大暴れする人情コメディ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治氏)は、季節ネタを積極的に取り入れる作品だった。とくに新年はお正月にちなんだエピソードが定番で、『こち亀』で年明けを実感する『週刊少年ジャンプ』(集英社)の読者もいただろう。 ■【画像】ピンク色のミニスカ制服で登場『こち亀』香里奈さん演じる麗子の姿■ そんな『こち亀』も2016年に連載を終え、両さんのお正月が読めなくなって久しい。そこで今回は『こち亀』のお正月にちなんだ名エピソードを紹介しよう。
■両さんと大原部長の争いは新年も変わらず…「部長邸新年会の巻」
まずは昭和61年のお正月を描いた「部長邸新年会の巻」から。タイトルの通り、大原部長の家で派出所のメンバーが新年会をする話だ。「上司の自宅で新年会なんてやるの?」と疑問に思った令和サラリーマンもいるだろうが、昭和ではそう珍しくもない慣習だったようだ。 さて「部長邸新年会の巻」は、毎年恒例の部長邸での新年会に両さんだけ呼ばれず、ハブられた展開から始まる。 両さんは怒り心頭で部長の家へ乗り込もうとするが「あえて下手に出た方がおせちもお酒も楽しめる」と考え直し、何事もなかったかのようにお邪魔することに。実利のためなら男のプライドをあっさり捨てるあたり、新年から両さんらしさ全開だ。 こうして新年会に参上した両さんだったが、大原部長からは当然邪険に扱われ、残り物のおせちや古くなった缶詰を食べさせられる。おさめていた怒りが徐々に復活し出し、書道大会でついに爆発。墨を大原部長の顔にまき散らしたり、文鎮をあごに投げつけたりとやりたい放題を始めると、大原部長も負けじと関節技で応戦だ。 最後は両さんと大原部長が取っ組み合いの喧嘩を始め、それを見た中川の「兄弟げんかみたいなものですよ」のひと言で話は終わる。両さんと大原部長が争うお約束が新年から見られるとは、なんとも縁起のいい(?)お正月ではないか。
■寒い1月も温かい気持ちになれる人情噺「お正月は駄菓子屋で!の巻」
次は、平成元年の「お正月は駄菓子屋で!の巻」を見てみよう。元旦に大清掃のため男子寮を追い出され、行くアテのない両さんが馴染みの駄菓子屋を訪れるエピソードで、いわゆる「人情話」である。 お正月に駄菓子屋「黒田屋」を訪れた両さん。店主のおばあちゃんは珍客に驚きながらも手作りのお雑煮を振る舞い、しかも「おかわりしていいからね」と言ってくれる。お正月に連絡もなくいきなり現れた両さんを受け入れるおばあちゃん、懐が深い。 お雑煮をご馳走してもらった両さんは、お返しにおばあちゃんの手伝いを買って出る。大掃除で出てきたおもちゃを福袋に詰めたり、子どもに凧上げを教えたり、その姿はまるで駄菓子屋の孝行息子のようだ。 最近引っ越してきた内気な子をみんなの仲間に入れてやるシーンなどは、両さんの気遣いが光っている。金が絡まなければ両さんはきっぷが良く、面倒見の良い男なのだ。 こうして駄菓子屋で元旦を過ごした両さんは、次の行き先を派出所に決めて立ち去る。別れ際に両さんとおばあちゃんが交わしたやりとりがなんとも印象的だ。 「駄菓子屋でもうけて そのうちビルを建ててくれよ!」 「その時は副社長にしてあげるよ」 この家族のような距離感の近さこそ、古き良き下町の風情なのだろう。