最後まで「現役」貫いた鈴木修氏、静岡では川勝前知事や鈴木知事の「後ろ盾」としても存在感
スズキ(浜松市)を世界的な自動車メーカーに押し上げ、経済界だけでなく静岡県政界でも存在感を持った同社相談役の鈴木修氏(94)の訃報(ふほう)が公表された27日、静岡県内では悼む声が広がった。関係者によると、鈴木氏は秋に体調を崩し、浜松市内の病院に入院していた。相談があれば筆談で応じ、最後まで「現役」を貫いたという。 【動画】かわいいデザインに低燃費 9代目のアルトに試乗
「芸術品は守り通してほしいですね」。鈴木氏は長年、自社の軽自動車を「芸術品」と呼び、会長退任を前にした2021年5月の決算説明会でも思いを語っていた。
車体の大きさや排気量に制限がある中で「アルト」(1979年)や「ワゴンR」(93年)などをヒットさせ、市場を盛り上げた。スズキの行動理念「小・少・軽・短・美」(小さく・少なく・軽く・短く・美しく)を掲げて生産や販売の現場に足しげく通い、効率化とコストダウンを実現させてきた。
世界にも目を向け、特にインドでは1980年代から四輪の生産を開始。経済成長とともに、今年は四輪の年間生産台数が初めて200万台を超えた。
インド訪問中の浜松市の中野祐介市長は「インドと浜松市との交流に長きにわたりご貢献いただいた話を聞いたばかりで、新たな連携が始まったタイミングでの訃報に残念でなりません」とのコメントを出した。
浜松商工会議所の斉藤薫会頭は「先を見通す鋭い経営眼と卓越した経営手腕でスズキを育て上げ、浜松地域経済を支えてきた。浜松の行政区再編や防潮堤整備などにも関与され、浜松市民が安心・安全な市民生活を送る礎となった」と敬意を表した。
鈴木氏は県政界でも存在感があった。前知事の川勝平太氏、浜松市長を務めた鈴木知事の後ろ盾となった。5月の知事選では鈴木知事の陣営で支援を呼びかけていた。自身も浜松市の行財政改革推進審議会の会長を務め、行政区再編を求めた。
鈴木知事は報道陣の取材に「20年以上、公私にわたって大変お世話になった親父(おやじ)みたいな存在で、喪失感でいっぱいだ。相談役の遺志や教えを胸にしっかり仕事をしていきたい」と話した。